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【症例】40歳男性、O型
【現病歴】27歳時に巣状分節性糸球体硬化症と診断され、35歳で血液透析を開始した。64歳B型の実母をドナーとする血液型不適合生体腎移植のため39歳3か月で当院に入院となった。
【既往歴】39歳2か月で腹腔鏡下両側腎摘除術
【経過】入院時の抗B抗体価はIgG×32、IgM×32であった。HLAは5ミスマッチ、クロスマッチは陰性であった。腎原疾患(巣状分節性糸球体硬化症)、血液型不適合移植を考慮しプロトコールに従い脱感作療法を行った。術前に2回RTX100mgを投与し、術2週間前からMMF1500mg、術1週間前からTAC7mg、mPSL16mgの内服が開始された。抗体除去療法は二重濾過血漿交換法を3回、単純血漿交換法を1回施行し、最終抗B抗体価はIgG×8、IgM×2、また術前S-Cre7.49mg/dLであった。移植術は滞りなく行われ、POD3にはS-Cre2.32mg/dLまで低下したが、POD5には尿量低下とともにS-Cre3.35mg/dLと上昇を認め、移植腎生検が行われた。
組織所見では尿細管周囲毛細血管炎を認め、バンフ分類(t0, i0, ti0, g2, v0, ptc2, ci1, ct0, mm0, aah0)であり、急性抗体関連型拒絶反応が疑われた。同日抗B抗体価はIgG×16、IgM×32と上昇を認めたことと併せて抗B抗体による促進型急性抗体関連型拒絶反応と診断した。DSAは陰性であった。mPSLのパルス療法、単純血漿交換、IVIG、DSGによる加療がなされたが、POD13にはS-Cre3.39mg/dL, 抗B抗体価はIgG×16、IgM×1024まで上昇した。同日施行された再生検では, バンフ分類は(t0, i0, ti0, g0, v0, ptc1, ci1, ct1, cv0, cg0, mm0, aah0)であるも、間質全体の浮腫、尿細管壊死、間質出血、小動脈の内皮細胞障害、腎周囲組織の動脈血栓がみられ尿細管壊死を中心とする活動性の高い急性抗体関連型拒絶反応の像がみられた。これまでの治療が奏功していないことからボルテゾミブ2.3mgを計4回投与(POD15, POD18, POD22, POD25)したところ、POD28には抗B抗体価IgG×2、IgM×8まで改善し、S-Cre1.6mg/dLまで速やかに低下した。その後Cr 1.4〜1.5mg/dL程度で安定し、POD49に退院となった。退院時の免疫抑制剤はmPSL8mg、Tac-ER3.5mg、MMF2000mgであった。3か月後のプロトコール生検では間質異常所見は回復し、尿細管のごく軽度の萎縮を認めるのみであった。
【結語】重篤な抗血液型抗体による抗体関連型拒絶反応に対してボルテゾミブの投与が臨床的・組織的に著効し、移植腎機能廃絶を免れた症例を経験したので提示する。 |