移植腎血流不全によるATNの経過中non-HLA抗体によると思われる急性抗体関連型拒絶反応を併発した先行的生体腎移植の1例
Antibody mediated rejection in a living related kidney transplant recipient with non-HLA antibody during the course of insufficient graft perfusion

東邦大学医学部 腎臓学講座
* 松村 正文、小口 英世、河村 毅、米倉 尚志、村松 真樹、
板橋 淑裕、兵頭 洋二、高橋 雄介、二瓶 大、宍戸 清一郎、
酒井 謙、相川 厚
山口腎病理組織研究所
山口 裕
東邦大学医学部 病理学講座
三上 哲夫
東邦大学医学部病院 病理学講座
根本 哲生、澁谷 和俊

 症例は64歳、男性。原疾患不明の慢性腎不全に対して、2015年9月 64歳の妻をドナーとした血液型適合先行的生体腎移植を施行した。HLAは6 mismatches、CDCXM、FCXMはいずれも陰性であった。導入免疫抑制は、CyA, MP, MMF, BLXの4剤で行った。移植腎動脈は、総腸骨動脈に端側吻合し、温阻血時間、総阻血時間はそれぞれ2分、1時間29分であった。術中に初尿は確認できず、移植腎の1時間生検では軽度の急性尿細管障害が認められた。急性尿細管壊死と判断し経過をみたが、尿量保持の一方で術後血清クレアチニン値は下がらず、さらに尿蛋白は増加し、一日8gに及んだ。術後6日目のRIで移植腎の有効血漿流量の低下が認められたため、術後7日目に再手術を施行した。手術時、移植腎動脈の血流は拍動性であったが、内腸骨動脈を結紮・切断することで移植腎動脈の向きが変わり、移植腎動脈の血流は改善しスリルを触知するようになった。同時に移植腎生検も施行し、手術を終了した。蛍光抗体法でC4d(-)であるが、光顕では内皮細胞腫大、基底膜断裂、赤血球充満を伴った高度のPeritubular capillaritisが認められ、V2レベルの動脈内膜炎も伴い、C4d陰性のAntibody-mediated rejection(i1, t0, g0-1, v2, ptc3, ah1)と診断し、ステロイドミニパルス治療を行った。治療によりCre6.8から1.68mg/dlまで改善し退院した。組織所見はTリンパ球関連急性拒絶反応では説明がつかず、抗HLA抗体検査でDSAは陰性であったが、移植後DGFの遷延にnon-HLA抗体によるAMRが関与した1例と考えた。

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