糸球体基底膜にホスホリパーゼA2受容体染色陽性を呈した移植後膜性腎症再発に対するRituximab投与症例の病理学的検討

東京都保健医療公社大久保病院 腎内科
* 石渡 亜由美、長谷川 純平、若井 幸子
東京女子医科大学腎臓病総合医療センター 病理検査室
堀田 茂
聖マリアンナ医科大学 病理学教室
小池 淳樹
昭和大学医学部 解剖学講座 顕微解剖学部門
本田 一穂
東京都保健医療公社大久保病院 移植外科
白川 浩希

【症例】60歳 男性 (移植時)
【現病歴】52歳時浮腫出現しネフローゼ症候群と診断。プレドニン、シクロスポリンは無効で、55歳腎生検で膜性腎症と診断(生検時:尿蛋白15g/day、Alb1.6g/dl、Cr2.49mg/dl)され、ミゾリビンが追加されたが無効であった。腎機能も徐々に悪化し57歳血液透析導入。2013年4月18日(60歳)、DFPPとrituximabによる術前脱感作を行い、tacrolimus、MMF、steroid、basiliximabによる免疫抑制導入により、妻をドナーとする血液型不適合生体腎移植術を施行した。術後1ヶ月の腎生検より膜性腎症再発の所見を認め、ARBを追加したが尿蛋白513mg/dayまで増加したため、術後6ヶ月でRituximab 200mg投与した。術後1年9ヶ月の腎生検でも膜性腎症が持続し尿蛋白877mg/dayを認め、術後2年目でRituximab 500mg投与を行った。その後尿蛋白152.9mg/dayまで減少して完全寛解を維持している。Rituximab500mg投与前後で糸球体基底膜のIgG、C4d、ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)染色陽性の減弱を認めた。
【考察・結論】本症例は術前にPSL, CyA, MZRなどの免疫抑制薬が無効であったことから、腎移植後に膜性腎症再発を来した際にRituximab投与を行い完全寛解を維持している。PLA2R抗体関連の特発性膜性腎症ではRituximabの有効性が示されてきたが、本症例では臨床的にも病理学的にも改善が見られた。

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