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血栓性微小血管症の鑑別に苦慮した既存抗体陽性の腎移植患者の一例 |
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九州大学医学部 病態機能内科学 |
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九州大学大学院 病態機能内科学 |
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九州大学大学院 臨床腫瘍外科学 |
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九州大学大学院 包括的腎不全治療学 |
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症例は67歳女性、慢性糸球体腎炎を原疾患とする腎不全に対し、44歳時に血液透析を導入、62歳時に夫をドナーとする生体腎移植を受けた。術前フローサイトクロスマッチ陽性のため、血漿交換を2回行い、Rituximab 200mgを投与した。術後経過は良好で、血清クレアチニン値(Cr)は1.2mg/dL前後で安定した。3ヶ月生検と1年後生検では明らかな拒絶反応の所見を認めず、タクロリムス(Tac)トラフ値は3-5ng/mLの範囲に維持された。その後、検尿異常を伴わない移植腎機能障害が緩徐に進行し、Cr 1.77mg/dLとなったため、移植56ヶ月目に移植腎生検を施行した。糸球体21個中6個の硬化糸球体を認め、2個に軽度の糸球体炎を、2個に軽度の係蹄壁の二重化を認めたが、傍尿細管毛細血管炎は認めなかった。間質線維化/尿細管萎縮は中等度であった。細小動脈には高度の硝子様変化を認め、小葉間動脈には内皮細胞の腫大と内皮下腔拡大による高度の内腔狭窄を認め、血栓性微小血管症と診断した。傍尿細管毛細血管や糸球体係蹄へのC4d沈着は陰性で、抗ドナー抗体も検出されなかった。Tacによる急性動脈病変が原因と考え、エベロリムスを追加(トラフ値3-5ng/mL)、Tacを減量(トラフ値1.5-2.0ng/mL)、かつミコフェノール酸モフェチル(1000mg/日)とステロイドの投与量を変更しない4剤併用療法にしたところ、以後、Cr上昇が止まっている。Tacトラフ値を目標域に維持していたにもかかわらず急性動脈病変を生じたこと、既存抗体陽性のため抗体関連拒絶との鑑別が重要であったことなど、示唆に富む症例と考えられた。 |
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