原疾患糖尿病腎症であったが、腎移植後に肥満関連腎症の再燃と診断した血液型不適合生体腎移植の1例

東京都保健医療公社大久保病院 腎センター
* 吉川 佳奈恵、今泉 雄介、小川 ひな、河野 桃子、石渡 亜由美、
斎藤 誉子、長谷川 純平、佐野 夏帆、亀井 唯子、川西 智子、
小川 俊江、阿部 恭知、遠藤 真理子、若井 幸子、石郷岡 秀俊、
白川 浩希

【症例】47歳男性。
 原疾患糖尿病腎症。糖尿病歴8年、インスリン未使用で血糖コントロールは比較的良好であったが、ネフローゼ状態となり、X-1年透析導入となった。
 X年母(69歳)をドナーとする血液型不適合生体腎移植を施行した。(体重74s)
 術後11日目腎生検でT細胞性拒絶反応(TCMR)の診断にてステロイドパルス療法施行。
 術後3ヶ月(体重76s)に血清Cre 1.68⇒2.00 mg/dl尿蛋白0.6gであったが腎生検では拒絶反応はなく経過観察となった。
 蛋白尿の増加があり(体重78s)、術後6ヶ月目腎生検で巣状糸球体硬化(FSGS)病変を認めた。DSAは検出されなかったが、傍尿細管毛細血管炎を認め、抗体関連型拒絶反応(ABMR)の関与を疑いリツキサン投与を行うも、治療効果は乏しかった。
 移植後1年目腎生検(体重84kg)では、FSGS病変、糸球体炎やメサンギウム融解を認めた。FSGSの可能性とABMRの関与を疑いDFPP治療を施行したものの腎機能・尿蛋白量に変化はなかった。
 ステロイド治療における移植後の血糖状態と体重の推移を踏まえて、FSGS病変は肥満関連腎症による二次性のものが考えられ、食事療法と運動療法による治療方針へ変更した。
 移植2年後の腎生検(体重 84s 蛋白尿0.6g)ではFSGS病変とともに糸球体肥大所見を認め、二次性FSGSを疑う所見であった。
【考察】本症例は腎移植後の腎機能障害、蛋白尿増加の原因として一次性FSGSとABMRを考慮したが、臨床経過から肥満関連腎症による二次性FSGS病変と診断した。
移植前保存期に置いても、糖尿病性腎症の診断ではあったが、腎不全成因の主因として、肥満腎症であった可能性が考えられる。
 移植後は過剰濾過を起こしやすく、食事制限も解除されるためメタボリック症候群の発症しやすく、本症例のように急激な体重増加による肥満関連腎症は再燃しやすい。
 糖尿病性腎症と診断されるなかには、このような肥満関連腎症も含まれている可能性がある。
肥満腎症に関して文献的考察を加え報告する。

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