糖尿病性腎症を原疾患とする移植腎予後および糖尿病性腎症再発例の組織学的進展の評価
Prognosis and histopathological progression of kidney allograft in recipients with diabetic nephropathy as primary kidney disease

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 勝馬 愛、中田 泰之、山本 泉、川邊 万佑子、山川 貴史、
勝俣 陽貴、眞船 華、小林 賛光、丹野 有道、大城戸 一郎、
坪井 伸夫、横尾 隆
厚木私立病院 内科
山本 裕康
東京女子医科大学 腎センター
堀田 茂
東京女子医科大学 泌尿器科
奥見 雅由、石田 英樹、田邊 一成

【背景】糖尿病性腎症(Diabetic Nephropathy:DNP)は本邦における末期腎不全の原疾患第一位であり、同疾患の病態についての詳細な検討は重要であるが、移植後のDNP再発に関して、組織学的評価を行った報告は少ない。移植腎生検を用いることで、DNP再発の早期からの詳細な経時的組織学的進展の評価が可能と考えられる。
【目的】DNPを原疾患とする腎移植例の移植腎予後とDNP再発例における組織学的所見の進展を評価する。
【方法】1989年7月〜 2011年12月までに東京女子医科大学泌尿器科で腎移植を施行した、DNPを原疾患とする76例の生存率と腎生着率を評価した。またDNP再発例における組織学的所見を経時的に評価した。
【結果】DNPを原疾患とする症例(計76例)において、生存率は5年で94.7%、10年で80.2%、移植腎生着率は5年で94.5%、10年で74.4%であった。移植腎廃絶の原因は、death with functioning graft(DWFG)が54.2%(死因:心血管系疾患53.8%、悪性腫瘍30.8%、その他15.4%)、慢性拒絶反応37.5%、その他8.3%で、DNP再発による移植腎喪失は認めなかった。1年以上の組織学的評価が可能であった44例のうち、組織学的にDNP再発と診断された症例は7例(再発率15.9%)であり、診断に至るまでの期間は中央値で62ヶ月(95% C.I. 20−93ヶ月)であった。移植後早期にみられた所見は細動脈硝子化、メサンギウム基質拡大および糸球体門部血管増生であり、3年後でそれぞれ28.6%, 42.9%, 28.3%、7年後でそれぞれ50%, 66.7%, 33.3%であった。
【結論】DNPを原疾患とする腎移植における生存率及び移植腎生着率は他の原疾患に比べ低く、移植腎喪失の主たる原因はDWFGおよび慢性拒絶反応であった。DNP再発率は15.9%であり、5年程度で早期再発が生じるものの、移植腎機能に与える影響は限定的であった。

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