Plasma cell-rich acute rejection 5症例の臨床病理学的検討
Clinicopathological analysis of five cases of plasma cell-rich acute rejection in kidney transplant recipients

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 眞船 華、山本 泉、中田 泰之、川邊 万佑子、勝馬 愛、山川 貴史、
勝俣 陽貴、小林 賛光、丹野 有道、大城戸 一郎、坪井 伸夫、
横尾 隆
厚木市立病院 内科
山本 裕康

【背景】Plasma cell-rich acute rejection(PCAR)は、急性拒絶反応の1つで、炎症細胞浸潤のうち、成熟した形質細胞の浸潤が10%以上を占めるものと定義される。PCARは、急性拒絶反応の5-14%を占める稀な病態とされるが、総じて難治性とされ、有効な治療法も確立されておらず、移植腎機能および移植腎喪失率に大きく影響する。最近では、抗体関連型拒絶反応(Antibody mediated rejection: ABMR)との関連が指摘されているが、PCARの臨床病理学的特徴については、不明な点が多い。
【対象と方法】当院でPCARと診断された5例の臨床病理学的特徴と移植腎予後について検討した。
【結果】5例は全て男性で、平均年齢は48±16歳、服薬コンプライアンスはいずれも良好であった。PCARの発症時期は腎移植後345±234日であった。全例で、CMVまたはBKウィルス感染症の既往または合併を認めた。ABMR合併例は2例で、PCAR単独例は3例であった。治療は、全例でステロイドパルス療法を施行した。PCAR単独例には免疫抑制剤の増量を行い、ABMR合併例に対しては血漿交換とリツキシマブ、γグロブリンの投与を行った。治療後、全例でBanff t/i scoreの改善を認めた。PCAR発症1年後の血清クレアチニン(Cr)値が3mg/dl以上を移植腎予後不良と定義した場合、5例中2例が移植腎予後不良であった。予後不良例は、PCAR発症時のCr値が2mg/dl以上と高値であった。また、経過中にABMRもしくはT細胞型拒絶反応が遷延し、治療抵抗性を示した。一方、予後良好の3例は、PCAR発症時のCr値が2mg/dl未満であった。うち1例はsubclinical ABMRを合併していたが、早期治療が奏功した。残り2例はABMRの合併を認めなかった。
【結論】PCARでは、発症時のCr値が2mg/dl以上、かつ、拒絶反応に対して治療抵抗性を示した場合、移植腎予後は不良であった。

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