生体腎移植0時間生検でSLE様の免疫グロブリン沈着を呈した4症例の臨床病理学的検討
Four case of 0 hour renal allograft with SLE-like immunoglobulin deposition

東京女子医科大学病院 第四内科
* 澤田 杏理、海上 耕平、新田 孝作
東京女子医科大学病院 病理診断科
澤田 杏理、川西 邦夫、長嶋 洋治
東京女子医科大学病院腎センター 病理検査室
堀田 茂
東京女子医科大学病院 第二病理学教室
種田 積子
東京女子医科大学病院 泌尿器科
清水 朋一、奥見 雅由、石田 英樹、田邉 一成
東京女子医科大学病院 腎臓外科
渕之上 昌平
川崎市立多摩病院 病理部
小池 淳樹
昭和大学 解剖学講座 顕微解剖学部門
本田 一穂
東京女子医科大学病院 腎小児科
服部 元史

【緒言】全身性エリテマトーデス(SLE)は全身の臓器に多彩な症状を呈する自己免疫性疾患で、臓器障害と血清学的異常所見より診断する。近年、SLEの診断基準は満たさないが、腎生検組織で、免疫グロブリンと補体がfull houseに沈着する、renal limited “lupus like” nephritisの疾患概念が提唱された。今回、我々は、生体腎移植時の0時間生検で、光学顕微鏡での異常は認めないが、IFでfull houseの沈着を呈する4症例についての臨床病理学的検討を行ったので報告する。
【症例1】61歳女性。RS3PE症候群(Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis With Pitting Edema)を原疾患とする慢性腎不全で透析導入となった。67歳の姉をドナーにABO型適合生体腎移植を施行された。0時間腎生検は、IgG 2+, IgA ±〜+, IgM +〜 2+, C1q 2+, C3 +〜 2+で、電顕ではメサンギウム領域を主体にEDD(Electron dense deposit)の沈着を認めた。双方とも移植後の腎機能は良好であった。3か月後の移植腎生検で、免疫グロブリン沈着の減弱を認めた。
【症例2】13歳男性。先天性腎尿路異常を原疾患とする慢性腎不全で透析導入となった。51歳の父をドナーにABO型適合生体腎移植を施行された。0時間腎生検は、IgG+, IgA ±, IgM+, C1q+, C3+であった。
【症例3】10歳男性。先天性腎尿路異常を原疾患とする慢性腎不全で透析導入となった。32歳の母をドナーとしたABO型適合生体腎移植を施行された。0時間腎生検は、IgG+, IgA 2+, IgM+, C1q+, C3 2+であった。移植後10年で慢性活動性抗体関連型拒絶の所見を呈したが、免疫グロブリン沈着は減弱し、移植後3912日の生検ではIgM+のみを認めた。この間、ドナーは腎機能異常なく経過した。
【症例4】53歳女性。IgA腎症を原疾患とする慢性腎不全で透析導入となった。52歳の夫をドナーにABO型不適合生体腎移植を施行された。0時間腎生検は、IgG+, IgA-, IgM+, C1q+, C3+であった。その後、移植腎生検は確認できていないが、移植後11年目まで腎機能異常を認めずに経過した。
【まとめ】0時間生検で、SLE様の免疫グロブリン沈着を呈した生体腎移植例4件を経験した。いずれも光学的顕微鏡での異常所見がないのが特徴であった。臨床病理学的検討の詳細と文献的考察を含めて報告する。

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