IgA腎症再発に対して扁桃腺摘出術およびステロイドパルス療法が奏功した長期腎移植患者の一例

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 勝俣 陽貴、山本 泉、小林 賛光、中田 泰之、眞船 華、勝馬 愛、古谷 麻衣子、山川 貴史、岡林 佑典、新倉 崇仁、小松嵜 陽、丹野 有道、大城戸 一郎、坪井 伸夫、横尾 隆
厚木市立病院
山本 裕康

 症例は46歳男性。1983年に蛋白尿および血尿のため他院で腎生検を施行も詳細は不明。1999年4月に視力低下(高血圧性網膜症)を機に外来受診した際末期腎不全を認め、同年4月17日より血液透析開始となり、5月6日からの腹膜透析療法を経て、2000年11月29日に実母をドナーとする血液型適合不一致生体腎移植(B→AB型)を施行した。3 ヶ月目および1年目のプロトコール腎生検では明らかな拒絶反応は認められなかった。パルボウイルスB19による赤芽球瘻のため、2001年以降タクロリムスからシクロスポリンに変更した。以降外来では血清Cr 1.5mg/dl、尿蛋白 0.2-0.3g/day前後で推移したが、2008年3月に血清Cr 1.8mg/dl、尿蛋白 0.7g/dayと増悪し、エピソード生検を施行した。腎生検所見では明らかな拒絶反応はなかったが、約40%の糸球体に球状硬化がみられ、残存糸球体では、メサンギウム基質増加、メサンギウム細胞増生、同部位におけるIgA染色陽性所見から、IgA腎症の再発と考えた(Oxford分類 M1S1E0 T0)。なお、細動脈の硝子化が著明であったことから、シクロスポリンからタクロリムスへ変更した。塩分制限を徹底したところ、蛋白尿150mg/dayまで低下したため、経過観察となった。以降血清Cr 1.7mg/dl前後を推移したが、2010年1月より再度蛋白尿の増加(1g/day)が認められ、減塩徹底後も0.4-0.8g/dayが持続したため、2010年9月17日に再度エピソード生検を施行した。腎生検所見では明らかな拒絶反応を認めなかったが、前回の生検に比べて尿細管間質障害度の増加(10%→20%)がみられた。さらに、残存糸球体では、メサンギウム基質増生およびメサンギウム細胞増加だけでなく、2つの糸球体においてendocapillaryおよびextracapillary proliferationを認めた。軽度ではあるが、IgA腎症再発の活動性を認めたことから、2010年9月に扁桃摘出術を行い、ステロイドパルス療法(mPSL 500mg×3days)を3クール(5、7、9月)施行した。その後、尿蛋白は約半年かけて徐々に低下し、2015年の外来においても、蛋白尿0.3g/day前後、血清Crは1.5mg/dl前後で推移しており、治療効果を認めた。腎移植後IgA腎症再発およびCNIによる慢性腎毒性は、いずれも長期移植腎予後を達成するために重要な課題である。前者は、保存期IgA腎症におけるステロイドパルス療法と扁桃摘出の併用が寛解率が高いことが報告され、後者はシクロスポリンに比べてタクロリムスの優位性や、CNIに比べてmTOR阻害剤の優位性を示唆する報告が散見される。本例を通して、いまだ議論の余地のある両病態につき、文献的考察を加えて報告する。


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