抗HLA-DR53抗体による急性抗体関連型拒絶反応にplasma cell-rich acute rejectionを伴った献腎移植の1例

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
勝馬 愛、山本 泉、小松嵜 陽、新倉 崇仁、岡林 佑典、山川 貴史、
勝俣 陽貴、眞船 華、古谷 麻衣子、中田 泰之、小林 賛光、
丹野 有道、大城戸 一郎、坪井 伸夫、横尾 隆
東京慈恵会医科大学 泌尿器科
小池 祐介、三木 淳、山田 裕紀
厚木市立病院
山本 裕康

 症例は56歳米国人男性。リチウム中毒による末期腎不全(双極性障害の既往)で、6年間の血液透析を経て、2013年5月に米国にて献腎移植(21歳女性)(6 locus mismatch、CIT 23h 19min、DGFにて数回HD)を施行した。その後、3か月目プロトコル生検でBK nephropathy、1年目のプロトコル生検でminimal antibody-mediated rejection(ABMR)と診断された。【軽度毛細血管炎、DSA: HLA-DR53(MFI 4438)、peritubular capillary(PTC)C4d】しかし、血清Crは1.2mg/dl前後と悪化を認めず推移していたことから、追加治療は行わずに経過観察となっていた。2014年12月に日本への転居に伴い当科を紹介受診となり(血清Cr 1.2mg/dl、尿蛋白0.02g/day)、2015年2月に腎生検を施行した。腎生検所見では、皮質に比較的形質細胞の目立つ単核球の浸潤と、一部に好中球の浸潤を伴う中等度の傍尿細管毛細血管炎および中等度の糸球体炎を認めた(Banff分類:i2, t1, g2, ptc2, v0, ci1, ct1, cg0, cv0)。PTCにC4d陽性で、抗ドナー特異抗体として、HLA-DR53に対する抗体がごく軽度検出された(MFI 828)。追加で施行したEBER、κλ染色、IgG4染色はいずれも陽性所見を認めなかった。また、SV40染色は陰性で、血中BKウイルス定量も陰性であった。以上より、抗HLA-DR53抗体に伴うABMRの進展にPlasma cell-richacute rejection(PCAR)が加わったものと考えられた。臨床的に腎機能の悪化は目立たなかったが、一般的に、抗HLA-DR53抗体によるABMRやPCARはともに治療抵抗性で予後不良であることが知られ、また、あきらかな組織学的進展が認められたことを重視し、ステロイドパルス療法(500mg×3days)、血漿交換、γグロブリン静注(20g×2days)、リツキシマブ(200mg/body)による治療に踏み切った。その後合併症なく、血清Crは1.0mg/dl程度を推移した。本例は腎機能の悪化を示さなかったものの、抗HLA-DR53抗体に伴うABMRおよびPCARの随伴した症例と考えられ、組織所見をもとに加療を行った症例である。このような症例の治療方法は判断に迷うことが多く、示唆に富む症例と考えられ、文献的考察を含め報告とする。


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