腎移植後に血栓性微小血管症(TMA)を伴う急性抗体関連型拒絶反応(AAMR)を呈した一例

昭和大学医学部 内科学講座 腎臓内科学部門
橘 翔平、伊與田 雅之、井上 隆、式田 康人、池田 美紗、井芹 健、
猪口 貴子、森川 友喜、柴田 孝則
昭和大学医学部 外科学講座 消化器・一般外科学部門
吉武 理
山口病理組織研究所
山口 裕

【症例】50歳代男性。2007年慢性糸球体腎炎による末期腎不全で腎代替療法を開始した。2014年12月、妻をドナーとする生体腎移植(血液型不一致:A→AB、HLA 5ミスマッチ、リンパ球クロスマッチ陰性)を施行した。導入免疫抑制はタクロリムス(TAC)、ミコフェノール酸モフェチル、メチルプレドニゾロン(MP)、バシリキシマブで行い、Cr 1.57mg/dlで退院した。移植後81病日にCr 2.15mg/dlに上昇し、末梢血では破砕赤血球を認め、エピソード生検を施行した。光顕所見では、メサンギウム融解と糸球体係蹄内腔にフィブリン血栓を認め、TMAと診断した。また、糸球体炎、傍尿細管毛細血管(PTC)炎がみられ、PTCのC4d沈着陰性、ドナー特異的抗HLA抗体陰性からC4d陰性AAMRと診断した(Banff: AAMR type II, i1, t0, g2, v0, ci0, ct0, cg0, cv0, ptc1, ah0)。治療はMPパルス療法2クール、血漿交換計3回を施行した。また薬剤性を考慮しTACをシクロスポリンに変更し、Cr 1.59mg/dlまで改善を認めた。
【結語】本例はAAMRがTMA形成に関与した可能性が考えられ、文献的考察を加えて報告する。


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