Foscarnet腎障害が疑われた血液型不適合二次生体腎移植後のGCV耐性 CMV感染症の1例

北海道大学病院 泌尿器科
* 岩見 大基、森田 研、大石 悠一郎、樋口 はるか、佐々木 元、篠原 信雄
北海道大学病院 病理診断部
藤田 裕美、畑中 佳奈子
NPO法人 北海道腎病理センター
小川 弥生

 症例は36歳女性、原疾患不明の慢性腎不全に対し2003年に母をドナーに生体腎移植を行ったが移植腎IgA腎症とCNI腎毒性で10年後に移植腎喪失、2014年2月に父をドナーに血液型不適合腎移植を行った。減感作療法にrituximabを200mg投与しTAC、MMFを2週間内服した。移植腎機能は良好に発現したが(SCr最低値0.8mg/dl)、1ヶ月目にリンパ嚢腫による尿管通過障害から移植腎盂腎炎を発症し、さらに2ヶ月目に移植腎の膀胱尿管逆流が判明し逆流防止術を行った。CMVはD/R-であったのでバルガンシクロビル(VGCV)を予防量内服していたが4ヶ月目にCMVアンチゲネミアが陽性化し(C10/11=36/34個)治療量に増量した。アンチゲネミアは速やかに陰性化しVGCVは予防量に戻した。7ヶ月目に腎機能が悪化し(SCr 1.44)、腎生検にてSV40T染色陽性であり尿中Decoycell陽性と血液BKV-DNA陽性(最大copy数=1.0x104)と合わせBKV腎症と診断した。またVGCV予防内服中にもかかわらずCMV感染による発熱、肝障害、網膜炎を発症し再びVGCVを治療量としγグロブリンを投与した。免疫抑制についてはMMFを中止しEVRを低用量で開始した。その後もアンチゲネミアは4週間以上上昇し続け(C10/11最高値=260/409個)、GCV耐性と判断しVGCVは中止しFoscarnet投与を開始、免疫抑制は漸減してきたTACを中止しステロイドとEVRの2剤で維持した。Foscarnet開始後3週間でアンチゲネミアは陰性化し肝障害と網膜炎は改善した。GCV耐性についてはUL97の遺伝子変異が確認された。また、Foscarnet治療経過中に腎機能の悪化あり(SCr 1.2→1.7)、移植後9ヶ月目となる腎生検では拒絶やBKV腎症の所見なくFoscarnetによる尿細管障害が疑われ、Foscarnetを5週間で終了したのち腎機能は保存的に改善した。現在移植後15ヶ月でCMVアンチゲネミア、尿中Decoy cell、血液BKV-DNAすべて陰性化し抗CMV治療は離脱、移植腎機能はSCr1.3で安定している。以上、血液型不適合二次腎移植後にGCV耐性CMV初感染症を発症しFoscarnet投与にて、BKV腎症については免疫抑制減量のみで、拒絶反応を起こすこともなく治癒できた。


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