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カルシニューリン阻害薬(CNI)により、腎移植成績は飛躍的に向上したが、CNI継続による腎機能障害などが、長期成績に影響を及ぼす可能性も指摘されている。mTOR阻害薬であるエベロリムス(EVR)は、CNIと作用機序が異なり、拒絶反応の抑制、CNI減量(中止)による腎毒性軽減、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、血管障害の抑制など種々の有用性が期待される。今回我々は、EVR投与後、ネフローゼ症候群ををきたし、腎組織でFSGS病変が認められた症例を経験した。症例は、58歳男性。ADPKD由来のESRDで血液透析導入し、2年後母をドナーとするABO適合生体腎移植を施行。免疫抑制剤は、当初TAC、MMF、MPを使用していたが、慢性活動性T細胞性拒絶反応とCNI腎症が認められたため、TACをEVRに変更。変更前に1g/日前後であった尿蛋白は、変更2か月後頃より急激に増加し、約8か月後ネフローゼレンジとなり、Crも2mg/dl台から3mg/dl台に上昇したため腎生検を施行した。その結果、変更前に認められたIF/TA、動脈硬化・細動脈硬化、CNI動脈症以外に新たにFSGS病変が出現した。その後EVR減量とともに蛋白尿が減少したが、2g/日前後は出続け、腎機能も徐々に悪化した。sirolimus使用後のFSGS発症の報告はあるが、EVR使用後での報告は少数例である。本症例におけるFSGS病変の原因として、様々な要因が考えられるが、EVRとの因果関係を否定することはできず、今後も詳細に検討する必要があると思われた。
(Emmanuel Letavernier et al.: Clin J Am Soc Nephrol 2: 326-333, 2007.)。 |