移植腎に再発した糖尿病性腎症の2例

東邦大学医学部 腎臓学講座
* 斎藤 彰信、大橋 靖、河村 毅、相川 厚、酒井 謙
東邦大学医学部 小児腎臓学講座
宍戸 清一郎
東邦大学医学部 病院病理学講座
根本 哲生、渋谷 和俊
浦安中央病院
高須 二郎

【症例1】67歳男性。原疾患は糖尿病性腎症で2006年血液透析を導入した。2008年に妻をドナーとする生体腎移植術を施行し、免疫抑制剤はCsA、mPSL、MMF、Basiliximabで導入した。定期腎生検を1ヶ月、3ヶ月、1年、3年、5年目に施行したが、明らかな拒絶反応は認めなかった。その後血清Cr1〜1.3mg/dl、eGFR40〜50前半で経過し、血糖コントロールはDPP-4阻害薬、α-グルコシダーゼ阻害薬内服にてHbA1c7%前後で推移していた。2013年1月より尿蛋白1g/gCr以上が継続しており、その後増加傾向したため腎生検を行った。メサンギウム基質の増加、結節性糸球体硬化、輸出、輸入細動脈の硝子化、糸球体門部小血管増生(glomerular polar vasculosis)を認めた。
【症例2】39歳男性。原疾患は糖尿病性腎症で2002年腹膜透析を導入した。同年父をドナーとする生体腎移植術を施行し、免疫抑制剤はCsA、mPSL、MMF、Basiliximabで導入した。定期腎生検は1、3年目Border line、5年目に糖尿病性と考えられる硝子細動脈硬化、8年目にメサンギウム基質の増加、基底膜の肥厚を認めた。その後腎機能が徐々に増悪傾向であり10年目生検を施行した。(血清Cr4.06mg/dl、eGFR14.7、血糖コントロールはα-グルコシダーゼ阻害薬内服にてHbA1c6.3%)滲出性病変、glomerular polar vasculosisを認めた。
【考察】腎移植後の糖尿病性腎症再発の組織学的所見は早くて2年後に認められ、結節性病変はまれである。移植後の高血糖がリスクファクターであるとされている。自己腎に対する糖尿病性腎症の発症過程よりも進行は早く、免疫抑制剤の使用や機能的片腎による血行動態の関与が考えられる。今回、血管病変を主体とした糖尿病性腎症の再発と思われた2例を経験したので報告する。


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