Non-HLA抗ドナー抗体によるC4d陰性促進型急性拒絶反応の一例

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 新倉 崇仁、山本 泉、中田 泰之、小林 賛光、丹野 有道、横尾 隆
厚木市立病院 内科
山本 裕康

 症例は44歳男性。糖尿病性腎症由来の末期腎不全に対して2012年6月より腹膜透析療法を経た後、2013年9月19日ギッテルマン症候群の妻をドナーとする血液型適合不一致生体腎移植を施行した。移植後2日目に腎動脈ドップラーエコーで拡張期血流途絶がみられ、その後も高度の腎機能障害がみられていた(移植後3日目S-Cr 10.07mg/dl)ことから、血栓症や拒絶反応の関与を疑い、術後3日目に再開腹及び直視下移植腎生検を施行した。術中所見で静脈血栓を認めず、臨床的に促進型急性拒絶反応と考え、同日よりステロイドパルス療法(mPSL 500mg/日×3日)、γグロブリン療法(IVIG 40g/日)を施行した。得られた病理所見は、中等度の傍尿細管毛細血管炎と軽度の糸球体炎を認めるものの、C4dは陰性であった。一方、抗ドナー抗体はフローサイトクロスマッチでT/B細胞いずれも陽性であったが、抗HLA抗体スクリーニング(flowPRA法)は陰性、抗MICA抗体陰性であり、これら以外のnon-HLA抗ドナー特異的抗体(donor specific antibody:DSA)による抗体関連型拒絶反応と考えられた。追加治療として血漿交換療法、γグロブリン療法(IVIG 20g/日×2日)及びRituximab 200mg/dayの単回投与を行ったところ、腎機能は改善し、移植後1か月でS-Cr 2.2mg/dlまで低下した。治療効果判定のために移植後56日目(S-Cr 1.56mg/dl)に施行した腎生検では、傍尿細管毛細血管炎および糸球体炎は著明に改善し、限局した尿細管萎縮と間質線維化が認められるのみであった。その後、移植後6か月目でS-Cr 1.22 mg/dlと腎機能は安定している。
 本症例はC4d陰性のnon-HLA抗ドナー抗体による促進型抗体関連型拒絶反応という示唆に富む症例であり、若干の文献的考察を交え報告する。


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