糖尿病ドナーからの腎移植における、移植腎の糖尿病性変化についての検討

京都府立医科大学 移植一般外科
* 原田 俊平、中尾 俊雅、越野 勝博、鈴木 智之、昇 修治、伊藤 孝司、牛込 秀隆、 吉村 了勇
京都府立医科大学 病理診断科
西村 綾子

【目的】近年、糖尿病患者の増加に伴い、腎移植におけるドナーが糖尿病を有していることが少なくない。当院でもインシュリン使用なし(経口糖尿病薬のみ)、HbA1C<6.0%という基準を設けて腎移植を行っている。糖尿病ドナーのグラフト腎における糖尿病性変化が、移植後に病理組織学的にどのような経過を経るのかについて検討した報告は少ない。そこで、当院で施行した糖尿病ドナーからの腎移植レシピエントに関して、移植腎生検(1hour、1month、1year)における糖尿病性変化について検討した。
【方法】糖尿病ドナー(経口糖尿病薬内服あり)からの生体腎移植レシピエント(糖尿病なし)5例について検討した。レシピエントの術後血糖コントロールに関しては問題なかった。評価の方法として、Tervaertらの発表した分類法に基づき、移植腎生検(1hour、1month、1year)における病理組織学的な糖尿病性腎症進行度を以下の様に分類した。T:基底膜の肥厚を認める UA:中等度のメサンギウム領域の拡大を認める UB:高度のメサンギウム領域の拡大を認める V:50%未満の糸球体硬化を認める W:50%以上の糸球体硬化を認める 0:以上のいずれにも相当しない
【結果】それぞれ(1hour、1month、1year)の順に以下の結果となった。
 症例1:UA、UA、0 症例2:T、0、0 症例3:0、T、0 症例4:T、T、0
 症例5:0、UA、0 いずれの症例においても、移植腎の糖尿病性変化に関しては不変もしくは改善していた。
【結語】糖尿病ドナーからの腎移植の際、移植腎に初期の糖尿病性変化が見られても、レシピエントの術後耐糖能に問題がなければ、それらの所見は改善しうる可能性が示唆された。

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