C4d陰性混合型急性拒絶反応に対してステロイドパルス療法が奏功した一例

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 高村 毅、山本 泉、中田 泰之、小林 賛光、丹野 有道、横尾 隆
厚木市立病院 内科
山本 裕康

 症例は32歳男性。原疾患不明の末期腎不全に対して2012年7月より腹膜透析を開始し、2013年3月28日に実父をドナーとする血液型適合生体腎移植を施行した。術後経過は良好で腎移植後28日目(S-Cr1.3mg/dl)にて外来フォローとなった。しかし、5月7日にS-Cr1.8mg/dlと腎機能の悪化が認められたため、5月16日にエピソード生検を施行した。病理所見では、中等度の尿細管炎、糸球体炎および傍尿細管毛細血管炎に加え、尿細管腔内の好中球の集簇の目立つcell debrisが局所的に認められた。急性T細胞性拒絶反応だけでなく、急性抗体関連型拒絶反応および尿路感染症の合併が疑われたが、追加検査では、C4d陰性、抗HLA抗体スクリーニング(FlowPRA法)陰性、尿培養陰性、腎組織におけるメチレンブルーおよびグラム染色陰性であった。治療としてステロイドパルス療法を施行したところ、S-Crは1.5-6前後で安定化した。後日得られたドナーの協力のもと施行したフローサイトクロスマッチでT/B細胞いずれも陽性であったことから、non-HLA抗体に伴うC4d陰性急性抗体関連型拒絶反応と考えられたが、再生検では、病理学的に各種病変は著明に改善していたため、追加治療は行わなかった。現在移植後1年目でS-Cr1.42mg/dlと腎機能は安定している。本症例は急性T細胞性拒絶反応およびnon-HLA抗体による急性抗体関連型拒絶反応の混合型と診断されるが、ステロイドパルス療法のみで著明な改善が得られた点で示唆に富む症例と考えられ報告とする。


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