C4d陽性から陰性に転化した治療抵抗性抗体関連型拒絶反応の1例

東京女子医科大学 泌尿器科
* 土岐 大介、石田 英樹、清水 朋一、尾本 和也、野崎 大司、田邉 一成
東京女子医科大学 第二病理部
本田 一穂
川崎市立多摩病院 病理部
小池 淳樹
山口腎病理研究所
山口 裕

 症例は57歳男性。1995年慢性糸球体腎炎にて血液透析導入。1997年母をドナーとする生体腎移植術を施行したが、2006年慢性抗体型拒絶反応(C-ABMR)にてグラフトロス。2006年9月19日妹をドナーとして2次移植施行。導入はFK、MMF、MP、Basiliximabで行い、術前B細胞フロークロスマッチ陽性であったため脱感作としてDFPP3回、リツキサン200mg投与した。術後13日目(血清クレアチニン1.65mg/dl)にプロトコール生検施行。強い糸球体炎(g3)、中程度の傍尿細管毛細血管炎(ptc2)、フィブリノイド壊死を伴う細動脈血管炎(v3)、傍尿細管毛細血管(PTC)へのC4d沈着(PTC-C4d)陽性であり、急性抗体型拒絶反応(A-ABMR)と診断された。ステロイドパルスとデオキシスパーガリン(DSG)の投与を行ったがクレアチニンの低下を認めず、また蛋白尿が増加(1.43g/日)したため48病日に再度腎生検施行。ptc3、g3と活動性の高いA-ABMRが持続していたがPTC-C4dは陰性化し、かわりに糸急体係蹄(GC)のC4d(GC-C4d)が強陽性化した。抗ドナーHLA抗体も陰性であったが形態的にA-ABMRの遷延と考えPEX6回、IVIG120g、ステロイドパルス、DSGの再投与を行った結果、蛋白尿が3gから1gに減少した。2007年1月フォローアップの腎生検を施行したがA-ABMR像(g3、ptc2)及びGC-C4d沈着が持続しており(PTC C4dは陰性)、蛋白尿の増加を認めたことから、2月脾臓摘出術を施行した。その後は積極的な治療する事無く経過観察。しかし2007年7月の腎生検では、g3、cg2、ptc2、ptcbm2とC-ABMRへの進展が認められた。その後も2008年2月、2009年3月、2011年4月と腎生検を施行したが活動性のC-ABMRの所見に改善を認めなかったが一貫してPTC-C4d陰性、PTC−GC陽性であった。また血清クレアチニンは1.5-2mg/dl前後、蛋白尿は0.5-1g/dayで推移していた。ドナー特異的抗HLA抗体(HLA-A、B、DR)は経過観察中一度も検出されていない。2012年6月に一度IVIGを施行している以降はABMRに対する治療は行わず、降圧剤の調整等で蛋白尿をコントロールした。2014年5月現在Cr3.67mg、蛋白尿2.32gで外来経過観察中である。本症例は難知性のABMRが持続した1例と考えて妥当であると思われるが、PTC-C4dが初期のみ認められその後陰性化したこと、またドナー特異的抗HLA抗体が検出されなかった点で興味深い症例であった。

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