BKウイルス腎症の治療後に見られる一過性の血清クレアチニン上昇と再生検所見

九州大学大学院 病態機能内科学
* 升谷 耕介、土本 晃裕、松隈 祐太、野口 英子、 鶴屋 和彦、北園 孝成
九州大学大学院 臨床腫瘍外科学
栗原 啓、錦 建宏、北田 秀久、田中 雅夫
九州大学大学院 包括的腎不全治療学
鶴屋 和彦

【背景】BKウイルス腎症(BKVN)は腎移植後の重要な合併症である。BKVNの治療として免疫抑制薬の減量が推奨されているが、治療開始後も血清クレアチニン値(Cr)がすぐには低下せず、治療効果の判断に迷うことが多い。今回、治療後早期のCrの変動に注目し、以下の検討を行った。
【対象と方法】対象は九州大学病院で腎移植を行い、生検によりBKVNと診断した14例(年齢50±14歳、男:女=10:4、生体腎:献腎=12:2、移植後日数156±98日、ベースラインCr 1.1±0.4mg/dL、診断時Cr 1.6±0.6mg/dL)。再生検を施行した症例ではSV40 large T抗原の陰性化を、非施行例では尿中デコイ細胞の3回連続陰性化をBKVNの寛解と定義し、治療後のCrの変化と寛解の有無、および予後を比較した。再生検施行例では生検の時期と組織の炎症所見、SV40染色陽性率を検討した。
【結果】治療開始後2ヶ月間、Crは診断時の値より上昇し、3ヶ月以降安定した(1ヶ月後 2.4±1.3mg/dL、2ヶ月後 2.6±2.0mg/dL、3ヶ月後と4ヶ月後は共に2.3±1.2mg/dL)。Crの変動が15%未満であった5例は全例腎症が寛解し以後の移植腎機能も良好である。Crが15%以上上昇した9例のうち3ヶ月後にCrが低下傾向を示した7例も全て腎症が寛解し、1例のみが3年8ヶ月後に透析再導入となった。一方、3ヶ月後にCrが更に上昇した2例は反復生検でBKVNの所見が持続し、それぞれ194日後、364日後に移植腎機能が廃絶した。4ヶ月以内の再生検は8例に対し計19件行い(2ヶ月以内11件、2−4ヶ月以内8件)、各時期におけるSV40染色陽性率は91%、25%であった(p=0.001)。また、初回生検より2ヶ月以内の生検組織でBanff i-scoreが上昇し、2−4ヶ月後の生検では軽減していた(p=0.02)。
【結論】BKVNの治療後早期にはCrの上昇が見られ、この時期の再生検では間質細胞浸潤が増悪している。この現象はレシピエントの抗ウイルス免疫応答を見ている可能性があり、この時期を経てCrが低下する例はBKVNが寛解し、予後は良好と考えられる。

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