献腎移植後にT細胞関連型拒絶反応・消化管出血を起こし剖検で移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)と判明した一例

愛知医科大学病院 腎臓・リウマチ膠原病内科
* 市原 詩恵、笠置 智道、野畑 宏信、鈴木 啓介、今井 裕一
愛知医科大学病院 臓器移植外科
松岡 裕、堀見 孔星、打田 和治
愛知医科大学病院 病院病理部
横井 豊治
四日市市民病院 外科
蜂須賀 丈博
名古屋第二赤十字病院 腎臓内科
武田 朝美

 症例は64歳、男性。
 慢性糸球体腎炎による末期腎不全で約12年間の血液透析療法を経て献腎移植を施行した。移植後はCr 1.9mg/dlで推移していた。半年後に急性Tリンパ球関連型拒絶反応(UA)を認めステロイド投与で一旦改善したがCr 5.2mg/dlと増悪し血液透析の再導入となった。発熱・胆道系酵素の上昇を認め総胆管結石を治療し、さらに移植腎腫大が存在し移植腎による血栓性微小血管障害を疑う血球減少をきたしたため移植腎の摘出術を行った。しかし大量の消化管出血を発症し内視鏡的止血や動脈塞栓術を加えたが消化管大量出血を繰り返し永眠した。
 病理解剖を行い肝臓・脾臓・骨髄・リンパ節・消化管・in situ hybridization法(ISH法)でEBER(EBV small encorded RNA)陽性であった。CD20やCD79aも陽性を示した。摘出した移植腎を再検討すると移植腎にも同様の病変があり、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)のうち多形成PTLD(肝臓、脾臓、骨髄、膵周囲リンパ節、結腸、移植腎)と判明した。
 本症例は移植腎生検や移植腎摘出の際には診断はつかず、死後にPTLDが判明した一例であり、その臨床経過と病理所見を検討し報告する。


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