Plasma cell rich acute rejectionが疑われたABO不適合生体腎移植の一例

神戸大学大学院医学研究科 腎臓内科
* 吉川 美喜子、北村 謙、中井 健太郎、後藤 俊介
神戸大学大学院医学研究科 腎泌尿器科
石村 武志、藤澤 正人
神戸大学大学院医学研究科 病理診断科
原 重雄、西 慎一

【症例】37歳 男性 【血液型】B型 Rh
【現病歴】腎原疾患IgA腎症に対し16歳時にカクテル療法が施行されるも30歳時に末期腎不全に進展し、血液透析が導入された。34歳時(2010年3月)に実母(AB型 Rh+)をドナーとするABO不適合生体腎移植が施行された。術前減感作療法はリツキシマブ(RTX)(100mg/m2)、CisA250mg/日、MMF1000mg/日、mPSL16mg/日およびバジリキシマブ20mg×2、抗体除去療法は二重膜濾過法血漿交換(DFPP)1回、単純血漿交換1回が施行された。術後の経過は良好で、退院時CisA300mg/日、MMF1500mg/日、mPSL4mg/日で退院時のS-Creは1.3mg/dLであった。同年7月に汎血球減少に対し薬剤性骨髄抑制が疑われ、MMFが500mg/日に減量された。翌年1月にアデノウイルス膀胱炎に対し一時的にMMFがブレディニンに変更された。同年5月に施行された1年後プロトコール腎生検でg1、ptc2、電子顕微鏡でのPTCBMの多層化からchronic antibody mediated rejectonが疑われMMFが1000mg/ 日に増量された。以後はS-Cre 1.5-1.7mg/dL程度で推移したが、2013年3月ごろよりS-Creが2mg/dL前後に上昇し、同6月に施行された3年後プロトコール腎生検でCNI毒性の所見がみられたことから、8月にエベロリムス(EVR)1.5mg/日が導入された。血中濃度はCisAのトラフ値148ng/mL、EVRは感度以下であった。CisAを300mgから280mgに減量、EVR1.5mgから2.5mgに増量で経過が観察されたが12月にS-Creの増悪(3.78mg/dL、蛋白尿 0.6g/ gCre)が見られ、翌週さらにS-Cre5.1mg/dLまで上昇したことからエピソード腎生検が施行された。
【腎生検所見】間質が高度浮腫状で、形質細胞を主体とする間質への炎症細胞浸潤がび漫性に認められた。尿細管炎、動脈内膜炎の所見はなし。C4dスコア0、SV40染色陰性、ISHではEBER陰性、ISHでのκ:λは>10:1でlight chain restriction+。
【経過】DSAが強陽性であったこと、上記腎生検結果からPTLDよりむしろplasma cell-rich acute rejectionと判断され、mPSLのパルス療法、CNIの変更、MMF増量およびDFPP2回、単純血漿交換2回が施行された。治療に対し部分的な反応しかみられなかったことからスパニジンおよびRTXが投与されたが反応性に乏しく、翌年1月に大量ガンマグロブリン療法が施行され、最終的にS-Creは3.2mg/dLまで改善した。
【結語】本症例は病態が未だ明らかになっていないplasma cell-rich acute rejectionが疑われる一例である。PTLDとの鑑別も必要で、腎生検診断、および治療にも未解決点が多く、貴重な症例と考えここに報告する。


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