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症例は68歳男性。
尿路上皮癌による片腎摘出及び糖尿病性腎症を原因とした慢性腎臓病にて2010年6月に妻をドナーとして生体腎移植を施行。既往症として虚血性心疾患による経皮的治療歴があった。導入免疫抑制はバジリキシマブ、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェティルとし、ステロイドは3日間で離脱した。移植後早期の経過は良好で血清クレアチニン(sCr)1.8-2.0、尿蛋白0-0.05g/gCrで経過した。2年目の定期移植腎生検では尿細管空胞変性を認め、タクロリムス尿細管毒性が疑われた。しかしこの時のタクロリムスC0=2.9ng/ml、またAUC0-24=95.4ng.hr/mlと十分低値であり、さらなるタクロリムス減量を目的としてエベロリムスを開始した。0.5mg/dayで開始したがC0=1.16ng/mlであったので、1.5mg/dayに増量しC0=3.0-4.5ng/mlが得られた。タクロリムスは1.0mg/dayまで漸減した。この過程で尿蛋白が漸増し、エベロリムス開始3ヶ月目には1g/gCrとなったため、移植腎生検を施行した。結果、管内細胞増殖と内皮細胞腫大がび漫性にみられ、糸球体内の細胞はリンパ球はわずかで大部分がCD34 で内皮細胞と考えられた。また、C4d陰性で糸球体にdepositを認めなかった。動脈内膜炎や尿細管間質障害は認めなかった。抗ドナー抗体は陰性であった。薬剤性腎障害を第一に考え、エベロリムスを中止し、タクロリムス投与量を元に戻した。これにより蛋白尿は減少したが、0.5g/gCr程度で下げ止まったため、ステロイドミニパルス療法を施行。これにより尿蛋白は0.1g/gCrまで改善した。 |