preemptive移植後早期にTMAによる移植腎機能不全を来した1例

東京女子医科大学病院 第4内科
* 海上 耕平、新田 孝作
東京女子医科大学病院 病理診断科
川西 邦夫
東京女子医科大学病院 泌尿器科
土岐 大介、野崎 大司、尾本 和也、清水 朋一、乾 政志、
石田 英樹、田邉 一成
東京女子医科大学病院 第二病理学
本田 一穂
川崎市立多摩病院 病理部
小池 淳樹

 症例は33歳、男性。IgA腎症を原疾患とする慢性腎不全に対し、2013年3月上旬、63歳の父をドナーにpreemptiveで生体腎移植を施行した(A→O、DSA陰性)。移植後2日目より乏尿となり、血清Cr 9.27mg/dLと上昇を認めた。エコー上、移植腎周囲の筋層内に血腫を認め、貧血進行、血小板低下、LDH上昇が出現したため、移植後3日目に血腫除去術を施行した。同日の血液検査で、破砕赤血球の出現とハプトグロビンの低下を認め、腎生検で広範な尿細管壊死と糸球体係蹄内のフィブリン血栓を認めることから、本症をTMAと診断した。血漿交換療法、ステロイドパルス療法、ガンマグロブリンの投与を行ったところ、尿量2000mL/日、血清Cr 2.48mg/dLと回復した。移植後22日目に施行した移植腎生検では明らかな拒絶の所見は認めなかった。現在のところ移植腎機能の増悪は認めず、外来で経過観察中である。以上、移植後早期にTMAをきたし、迅速な診断と治療により移植腎機能を回復できた症例を経験したので報告する。


戻 る  ページの先頭