経時的変化を追えた移植腎腎動脈分岐狭窄によるネフローゼ症例

市立札幌病院 病理診断科
* 柳内 充、辻 隆裕、石井 保志、伊丹 弘恵、深澤 雄一郎
北海道大学病院 病理部
藤田 裕美
市立札幌病院 腎臓移植外科
岩見 大基、福澤 信之、原田 浩

 糸球体濾過圧の上昇は二次性のFSGSの原因となり得る。片側腎動脈狭窄や閉塞により、反対側に二次性FSGSがみられネフローゼ症候群を呈した報告は散見されるが、同一腎での変化を観察した報告例はない。今回、移植腎腎動脈分枝狭窄により腎血管性高血圧、ネフローゼ症候群を呈した症例に対して、狭窄部と非狭窄部から経時的に複数回の腎生検を行い、変化を観察し得た症例を経験したので報告する。
 症例は60代の男性。IgA腎症を原疾患とする腎不全で7年の透析歴を有していた。前医で腎移植を施行され術後管理目的に当院を初診した。ドナーの情報は不明である。移植後14週頃よりsCrの上昇とタンパク尿を認め、原因検索のため一環として移植後17週で造影CT検査を施行したところ、移植腎動脈は上極枝、下極枝に分岐しており、下極枝の高度狭窄を認めた。経皮的血管拡張術を施行したところ狭窄は若干改善したが、依然狭窄は残存した。タンパク尿が増悪したため、移植後40週で腎生検を施行したところ非狭窄血管灌流部でFSGS病変が観察された。再度の血管拡張術を施行し、狭窄が消失するとタンパク尿は改善した。現在移植後126週まで経過観察し良好である。


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