腎移植後2ヶ月で再発し2年半の経過で透析再導入となった紫斑病性腎症の一症例

千葉東病院 腎・糖尿病・内分泌内科
* 川口 武彦
千葉東病院 腎病理研究部
北村 博司
千葉東病院 外科
松本 育子、青山 博道、大月 和宣、丸山 通広、長谷川 正行、
西郷 健一、浅野 武秀、圷 尚武
藤田衛生保健大学医学部 臓器移植科
伊藤 泰平、剣持 敬

 症例は42歳男性。35歳時にアレルギー性紫斑病を発症し、急速進行性の紫斑病性腎症(HSPN)に対してステロイドパルス・血漿交換を施行されたが、慢性腎不全に移行し38歳時に血液透析導入となっている。その後紫斑病の再燃はなく、40歳時(透析導入18 ヵ月後)に、実母をドナーとした血液型不適合生体腎移植(A→O)を施行。術前HLA検査では3match 3mismatch(Recipient: A(24, 31)B(7, 44)DR(13, 14)Donor: A(2, 24)B(44, 61)DR(9, 13))、LCT T/B 陰性 FCXM T/B 陰性 PRA Class I 77.3% ClassII 91.4% であり、前処置としてDFPP 3回、PE 1回とRetuximab投与を行い、その後の免疫抑制としてBasiliximab、TAC、MMF、PSLを使用した。移植1時間後生検では、中等度の動脈硬化が見られたが、腎炎の持込みは認められなかった(画像1)。退院前のプロトコール生検(POD20)では、光顕上変化はなかったものの蛍光抗体法にてIgA、C3がメサンギウムに陽性であり、病理学的にHSPNの再発が考えられたが、臨床経過は良好であり経過観察となった。その後の外来にてCr値は上昇し(2.0→2.5mg/dl)血尿と高度蛋白尿(10g/日)も出現したためエピソード腎生検(POD58)を施行。光顕所見では高度の炎症細胞浸潤を伴う管内増殖病変をびまん性に認め、1個の糸球体では細胞性半月体形成が見られた(画像2, 3)。再発性HSPNに対しステロイドパルス(mPSL500mg×3日)を施行し血漿交換も追加したが、高度蛋白尿は持続し(尿蛋白5g/日)、腎機能は徐々に低下した。その後再びCr値の急激な上昇に対し(3.4→4.2mg/dl)2回目のエピソード腎生検(POD520)を施行。慢性障害に加えMPGN様の糸球体病変が見られ、HSPNとしての活動性は依然として持続していると考えられた。腎不全はその後も進行し、腎移植後2年半の経過で血液透析再導入となった(POD849)。本症例は、透析導入1年半後に紫斑病の病勢が落ち着いていると考えられた状況で腎移植を施行したのにも関わらず、極めて高い活動性を有するHSPNの再燃により透析再導入となっており、HSPNを原疾患とした腎移植管理について問題を提起する症例である。


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