移植直後に認めたFSGS再発例

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 堀家 敬司、武田 朝美、加藤 由貴、後藤 千慶、末田 伸一、
村田 実奈子、新城 響、大塚 康洋、稲熊 大城、山本 貴之、
辻田 誠、平光 高久、後藤 憲彦、鳴海 俊治、渡井 至彦、
両角 國男

【症例】67歳男性

【現病歴】50歳頃から尿蛋白を指摘されていた。
 60歳頃糖尿病と診断され治療開始。
 12年9月急激に浮腫が出現し、腎機能が悪化した。血液透析導入となったが、その後もネフローゼは遷延して いた。妻からの生体腎移植希望で当院紹介。
 13年4月妻をドナーとした生体腎移植施行。同時に原疾患の精査のために右自己腎摘(腎生検)を行った。
術直後経過良好であったが、1PODよりnephroticrangeの尿蛋白が出現した。自己腎生検でFSGSによるネフローゼであったことが判明し、移植後FSGSの再発と診断した。
 ステロイドパルス3日間+PEX 3日間+rituximab投与を行うも著明な改善を認めず、徐々にネフローゼ悪化した。CD19/20も完全に抑制されておらず、PEXおよびrituximabの追加、抗凝固療法の併用によりネフローゼの寛解を認めた。

【考察】FSGSの移植後再発は報告にもよるが平均30%程度に見られるとされ、小児のFSGSからの移植腎喪失は、 5年で6.1%との報告もある [1]。FSGSの発症機序にはCirculating factorが関与しており、その除去することで、再発を予防できるとされてきた。最近では、Circulating factorとして、Soluble Urokinase receptor(suPAR)がFSGS の発症に大きく関与するといわれている [2,3]。
 95年より当院で行われた腎移植後で、7例に腎移植直後よりFSGSの再発を認めている。
 9歳から20歳の小児から若年者で生体腎移植例である。時代ごとに移植前の治療は異なるものの、全例前処置 を行っており、7例中6例は現在もなお移植腎は生着している。
 原疾患の確定診断をしておくことは重要であり、またそれに合わせた移植前の処置も検討する必要がある。
 本症例は高齢発症のFSGSと稀な例であり、小児例と合わせ治療経過を報告する。

[1] Baum MA, Stablein DM, Panzarino VM, et al. Loss of living donor renal allograft survival advantage in children with focal segmental glomerulosclerosis. Kidney Int 2001; 59:328.
[2] Wei C, El Hindi S, Li J, et al. Circulating urokinase receptor as a cause of focal segmental glomerulosclerosis. Nat Med 2011; 17:952.
[3] Shankland SJ, Pollak MR. A suPAR circulating factor causes kidney disease. Nat Med 2011; 17:926.


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