腎移植後再発性IgA腎症に対する扁桃摘除術のメサンギウムIgA沈着と移植腎予後への有用性

大阪大学大学院医学系研究科 先端移植基盤医療学
* 市丸 直嗣、王 泳、貝森 淳哉、高原 史郎
大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学(泌尿器科)
奥見 雅由、矢澤 浩治、野々村 祝夫
桜橋医誠会クリニック
京 昌弘

【背景】腎移植患者における移植後再発性IgA腎症に対して扁桃摘除術が行われるが、治療前後の病理所見変化については不明な点が多い。

【対象と方法】腎移植後再発性IgA腎症により蛋白尿(平均397.2mg/day)が6 ヵ月以上遷延するため扁桃摘除術を行った5症例を、後方視的に解析した。治療後の再生検は5症例に対し計6回施行した。凍結標本から免疫蛍光染色を行い、治療前後の糸球体のIgA沈着を比較した。また、その他の病理所見および臨床経過も比較検討した。

【結果】扁桃摘除術後平均11.2カ月で蛋白尿は60.8±49.3mg/dayまで軽減した。血清クレアチニン値はほぼ不変であった。(1.33±0.31before vs. 1.24±0.29 after treatment, p>0.05)計6回の再生検のうち5回で扁桃摘除術後にメサンギウムへのIgA沈着が軽減していた。再生検標本では糸球体の半月体形成は見られなかったが、巣状の糸球体硬化やボウマン嚢との癒着を認めた。扁桃摘除術後の標本では間質線維化と尿細管萎縮が悪化していたが、有意差を認めなかった。

【結語】扁桃摘除術は腎移植後再発性IgA腎症による遷延性蛋白尿を軽減しうる。本検討では扁桃摘除術により病理学的にはメサンギウムへのIgA沈着が軽減し、急性糸球体病変が収束することが示された。これらの臨床所見および病理所見から、扁桃摘除術は腎移植後再発性IgA腎症に対して有用であると示唆された。


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