血管型拒絶反応における腎内微細血管病変の検討

大阪大学大学院医学系研究科 器官制御外科学 泌尿器科
* 山中 和明
兵庫県立西宮病院 病理診断科
岡 一雅
兵庫県立西宮病院 泌尿器科
平井 利明、岸川 英史、西村 憲二、市川 靖二
桜橋医誠会クリニック
京 昌弘
大阪大学 先端移植基盤医療学
高原 史郎
山口病理組織研究所
山口 裕

【目的】急性Tリンパ球関連型拒絶反応のなかで、血管型拒絶反応を伴う症例は、予後不良で治療方針も異なる。しかしながら、血管病変はその分布の不均一性より、標本上採取されない場合も考えられる。そこで、今回、血管型拒絶反応を伴う症例で、病変部以外の血管の特徴的所見の有無を検討した。

【対象】兵庫県立西宮病院泌尿器科で2010年以後に経験した血管型拒絶反応を伴う3症例を対象とした。3症例共にCre値上昇のため施行されたepisode biopsyで、V1相当の動脈内膜炎の像を伴っていた。血中抗ドナー抗体はなく、C4dの免疫組織学的検索でも陰性で、抗体関連型拒絶反応を否定した。

【方法】各症例の移植腎生検標本を用い、免疫組織化学染色にて検討した。 細胞の同定として血管内皮をCD31、T細胞をCD3、MφをKP1で行った。

【結果】内膜炎のない動脈内皮細胞の構造は保たれていたが、内膜炎のない細動脈周囲に、密な炎症細胞浸潤を認めた。うち2例では、同部位ではCD31の一部消失を伴う静脈炎の像を示していた。炎症細胞の静脈内腔への浸潤も伴っていた。炎症細胞は、T細胞、Mφのいずれも確認できた。傍尿細管毛細血管(PTC)の構築は保たれていた。

【結語】強い静脈炎の像は、血管型拒絶反応の随伴する所見の可能性が考えられた。


戻 る  ページの先頭