免疫寛容を獲得したと考えられた献腎移植症例

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 堀家 敬司、武田 朝美、稲垣 裕子、原 彩子、掛下 幸太、
村田 実奈子、新城 響、大塚 康洋、稲熊 大城、安次嶺 聡、
高田 昌幸、山本 貴之、辻田 誠、平光 高久、南木 浩二、
後藤 憲彦、渡井 至彦、両角 國男

【症例】50歳男性

【現病歴】小児期にHSPNの診断で治療歴あり。
25才時に高血圧および腎機能低下を指摘された。
29才時血液透析導入。 92年10月(31歳時)他院にて献腎移植施行。
recipient: HLA-A(2,24)B(52,54)DR(13,15)
donor: 25歳男性。HLA-A(24,−)B(52,54)DR(2,−)
初期免疫抑制はプレドニン、タクロリムス、ミゾリビンの3剤。術後Cr 1.2mg/dl程度で推移。
移植後糖尿病が発症したため、96年11月タクロリムスをシクロスポリンへ変更。
00年3月よりインスリン使用。
01年8月より通院されず。以後免疫抑制薬の内服なし。近医でインスリンによる血糖管理は行っていた。
12年1月腎機能障害(Cr 1.28mg/dl、UP 2)精査目的に近医より紹介。
10年にわたりステロイド、免疫抑制剤を内服していない状態であり、移植腎生検にて評価を行った。
高度な滲出性病変や結節性病変を伴う典型的な糖尿病性変化、また細動脈の高度のhyalinosisも認められた。蛍光抗体法はすべて陰性、電顕所見では慢性拒絶の所見なし、GBMの肥厚著明であった。

【考察】移植後10年近く拒絶なく経過したが、その後10年に渡り免疫抑制剤無投与となっていた移植腎組織を確認した。細動脈硬化性病変が非常に高度で、糖尿病をベースとした変化が主体であり、拒絶反応の所見は全く見られなかった。腎保護療法の強化で経過観察している。
免疫寛容を獲得したと考えられた献腎移植症例の組織像を呈示する。


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