腎移植後早期にTransplant glomerulopathyを呈しサブクリニカルに進展した1例

東京女子医科大学 泌尿器科
* 清水 朋一、石田 英樹、平野 一、野崎 大司、尾本 和也、
乾 政志、田邉 一成
東京女子医科大学 第2病理
本田 一穂
東海大学八王子病院 病理部
小池 淳樹

 今回、生体腎移植後早期の移植腎生検にてtransplant glomerulopathy(TGP)を呈し、移植腎機能が安定したため経過観察し、1年4ヶ月後の生検にてTGPが重篤化した1例を経験したので報告する。
 症例は47歳女性。2009年9月、弟をドナーに生体腎移植術施行した。腎移植前のCDCクロスマッチ(XM)はTcell、B cellともに陰性であった。フローサイトメトリークロスマッチ(FCMX)はT cell陰性で、B cellは移植前の検査では陰性であったが、後の再検査で陽性であった。Luminex法によるLAB Screen single HLA検査では、抗ドナー抗体(DSA)は移植前はClass Iが陰性であったがClass IIは陽性であった。
 腎移植手術時に超急性抗体関連型絶反応(a-AMR)をきたし大量γグロブリン静注(IVIG)とメチルプレドニゾロン1.5g投与した。一旦はおさまったものの移植後1日目より、再度a-AMRが出現し、IVIGと血漿交換を施行した。乏尿のため血液透析も継続的に施行した。移植後6日のLAB Screen single HLA検査ではDSAはClass I・IIともに陽性であった。移植後19日目施行した移植腎生検では中等度のtransplant glomerulitis(Banff score: g2)と中等度のperitubular capillaritis(ptc2)を認めacute antibody-mediated rejection Type IIと診断した。その後、IVIGを追加投与したところ尿量増加にて移植後34日後に透析離脱し、移植後39日後に血中クレアチニン(s-Cr)0.9mg/dLとなり関連施設に転院した。
 移植後49日目施行の移植腎生検では、中等度のtransplant glomerulitis(g2)のうえにごく軽度のtransplant glomerulopathy(cg1)も出現しており、chronic active antibody-mediated rejection(c-AMR)と診断した。ただしその後は移植腎機能良好でs-Cr 0.7 〜 0.8mg/dLであり蛋白尿も有意に認めず、臨床的に経過は良好であったため経過観察していた。
 移植後486日後に1年後のプロトコール生検を施行した。
 糸球体係蹄壁の二重化を高度に認め、transplant glomerulopathyはBanff scoreではcg3であった。軽度のtransplant glomerulitis(g1)と中等度のPeritubular capillaritis(ptc2)と、更に軽度の傍尿細管毛細血管基底膜の肥厚を認めた(ptcbm1)。傍尿細管毛細血管(PTC)へのC4dの沈着はdiffuseで高度(2)であった(C4d3)。
 電顕では糸球体内皮下の拡大を認め、傍尿細管毛細血管炎を認め、更に傍尿細管毛細血管基底膜重層化(PTCBMML)も認めた。
 以上より病理組織学的にc-AMRと診断し、transplant glomerulopathyの重篤化を認めた。
 その後rituximab 500mgの追加投与と、DFPP2回施行と同時期にIVIG施行した。現在もs-Cr 0.9mg/dLと移植腎機能は安定しており蛋白尿もほとんど認めていない。LAB Screen single HLA検査での抗ドナー抗体(DSA)はClass I、Class IIともに陰性化している。
 今後更に移植腎生検施行していく予定である。


戻 る  ページの先頭