遅発性混合型拒絶反応に対してボルテゾミブを用いた抗拒絶療法を施行した1例

札幌北楡病院 腎臓移植外科
* 三浦 正義
札幌北楡病院 腎臓内科
伊藤 洋輔
市立札幌病院 病理診断科
深澤 雄一郎、玉置 透

 症例は57歳男性。ABO不適合腎移植1年目に水痘感染症を発症し免疫抑制を減弱、その半年後に急激な移植腎機能の悪化がみられ(sCr 1.2→5.7)入院となった。即日の移植腎生検ではATMR IB及び強いptc炎が見られた。C4dはptcに陰性でAAMR疑いにとどまった。ATMRとしてrATGの投与を7日間行ったが8日目でsCr4.1までしか改善がなく、入院時DR53に対するDSAを認めたため、再度移植腎生検を行った。結果、尿細管炎は改善傾向だが尿細管のATN様変化が見られ、c4d陽性化、ptc炎、糸球体炎も見られ、AAMR typeIIの合併が確認された。これに対し、bortezomib1.3mg/m2を4回投与し、血漿交換を2回施行した。DSA量は減少したが移植腎機能は改善しなかった。25日目に再生検すると、borderline相当の尿細管炎とptc炎の残存が見られ、浸潤細胞はCD3 8が主体であった。また弓状動脈にtransplant arteriopathyを疑う所見を認めた。TMRの残存に対して32日目より再度rATGを7日間投与するsCrは4.3まで改善し退院した。しかし66日目には再度sCrが5.1に悪化し生検した。結果、ATMR、AAMRは治癒したものの小葉間動脈に中等度の内膜肥厚、尿細管の空胞変性が見られ、CNI毒性または虚血性変化と考えられたため、タクロリムスを減量した。sCrは106日目にはむしろ5.7に悪化したので生検すると拒絶反応の再燃はなく、小葉間動脈に高度の内膜肥厚による著しい狭小化が見られた。尿細管、糸球体は比較的保たれておりsCrの高さを説明できず、動脈病変による虚血障害が原因と推察している。

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