腎移植後13年目にC1q腎症を発症し、ネフローゼ症候群を呈した1例

東邦大学医学部 腎臓学講座
* 村松 真樹、酒井 謙、兵頭 洋二、水谷 年秀、柳澤 健人、
新津 靖雄、二瓶 大、河村 毅、相川 厚
東邦大学医学部 小児腎臓学講座
宍戸 清一郎
東邦大学医学部病院 病理学講座
根本 哲生、渋谷 和俊

 症例は20歳女性。1992年8月にFSGSを発症し、1993年4月にCAPDを導入ののち、1995年1月に両側固有腎摘出、1998年6月に父をドナーとするABO適合生体腎移植術を施行した。クロスマッチはT-cell、B-cell共に陰性、HLAは2mismatchであった。免疫抑制療法はcyclosporine(CsA)、mizoribine(MZR)、methylprednisolon(MP)を用い、 移植後の経過は良好であった。移植後4か月、1、2、3、5、10年目の定期生検ではFSGS再発の所見はなく、s-Crは0.6-0.9mg/dlと安定しており蛋白尿も認めなかった。CNIは移植後3年目に定期生検上ARを認めたため、CsAからtacrolimus(TAC)へ変更された。2011年1月にTACを減量し、同年7月に突如、蛋白尿(6.5g/gCr)の出現を認めた。その後も蛋白尿は持続し、診断目的に同年11月(s-Cr 0.76mg/dl)に移植腎生検を施行した。光顕では糸球体36個中16個の硬化、メサンギウム増殖を認め、Banff分類上g0、t0、i1、v1、ptc0、cg0、ct1、ci1、cv1、ah0、mm2であり、明らかなFSGSの再発の所見は得られなかった。また、C4dのperitubular capillaryへの染色は認めなかった。蛍光抗体法では、IgM、C1qはメサンギウム領域、capillary loopに線状、塊状に沈着を示した。電顕ではparamesangial領域にelectron-dense depositを呈していた。臨床学的、血清学的にも自己免疫疾患は否定されたため、組織学的に移植腎のC1q腎症の可能性が疑われた。TACを増量、MPは4mg隔日投与から4mg連日投与に変更し、同年12月に蛋白尿は消失した。しかし、2012年1月(s-Cr 0.89mg/dl)に再び蛋白尿17.4g/day、TP 5.3mg/dl、alb 1.7mg/dl、T-cho 412mg/dl、LDL 228mg/dl、浮腫を呈し、ネフローゼ症候群(NS)を発症した。ステロイドをMP 4mgからprednisolone(PSL)40mgへ、MZR 75mgをmycophenolate mofetil 750mgへ変更し、治療開始後13日目に蛋白尿は消失した。現在、PSL10mg投与により蛋白尿・NS再発を認めていない。C1q腎症の疾患概念は確立していないが、移植腎においてNSを発症したC1q腎症と考えられた1例を経験したので報告する。

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