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本邦でも腎移植後長期生着例が見られるようになったが、これら移植腎の組織学的変化についての解析は十分になされていない。今回、腎組織を経時的に追うことが可能であり、34年の長期生着後に移植腎機能廃絶に至った症例を経験したので報告する。
【症例】61歳、男性。1977年(27歳)に弟(22歳)をドナーとした1ハプロタイプ一致の生体腎移植を受け、免疫抑制療法はメチルプレドニゾロンとアザチオプリンにより血清クレアチニン(S-Cr)1.2mg/dlで退院された。この時の移植腎光顕所見は正常であった。移植20年目と23年目の腎組織所見では、糸球体障害、尿細管萎縮と間質線維化は軽度であり、臨床所見では蛋白尿(1)、S-Cr1.3〜1.4 mg/dlを認めた。その後、蜂窩織炎を3回、非定型抗酸菌(mycobacterium marinum)感染を発症した。移植31年目には、蛋白尿(2〜3)、S-Cr2.62mg/dlと悪化し、腎組織光顕所見では、糸球体係締壁の2重化とメサンギウム基質の増加および広範な糸球体硬化と尿細管・間質病変を示し、蛍光所見では、IgG・IgM・フィブリノーゲンの非特異的沈着のみでC4dは陰性であった。さらに電顕所見では、糸球体係締内皮下腔の拡大による基底膜の2重化を認めた。なお、抗HLA-class I, class II抗体(ELISA
assay)はいずれも陰性であった。この3年後(移植34年目)に移植腎機能不全のため血液透析へ再導入となった。
【まとめ】移植31年目の光顕および電顕組織像は慢性抗体型拒絶像に一致していたが、抗HLA抗体およびC4dがいずれも陰性であったため、Banff2007分類では抗体関連型拒絶に該当しないと判断された。移植腎病理診断ならびに治療に苦慮した超長期腎移植例として報告する。 |