移植腎生検を契機に診断し得たfibronectin腎症の1家系

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 大塚 康洋、後藤 憲彦、渡井 至彦、打田 和治、堀家 敬司、
稲熊 大城、武田 朝美、両角 國男
仙台社会保険病院 病理部
城 謙輔
神戸大学大学院医学研究科 内科系講座 小児科学
大坪 裕美、飯島 一誠

 診断の契機となった症例は移植時年齢52歳女性。中学生から尿蛋白陽性、46歳時にネフローゼ・腎機能低下を指摘され、49歳で血液透析導入となった。50歳、ASD, TRに対し手術、この際に輸血した。51歳、癌が疑われたため後腹膜腔鏡下左腎摘出術を施行し血管腫と診断された。52歳時に夫をドナーとする生体腎移植を施行した。血液型不一致(B→AB)で、DSA陽性、ドナーはHbA1c 6.5%、尿蛋白(−)、尿潜血(−)であった。1時間生検では動脈硬化性変化および持ち込みIgA腎症を認めた。18日後の退院時生検では、移植糸球体炎、PTCitisが広く存在し、1本の小葉間動脈で増殖性内膜炎を認め、AMRの存在が疑われた。約2ヶ月後にCMV感染を合併、尿蛋白1.01.4g/dayに増加したことより再発性腎炎を疑い4ヶ月目に移植腎生検を施行、さらに7ヶ月後および1年後にプロトコール生検を施行した。内皮下のdepositsが目立つようになり(画像1)、GBMの二重化や軽度のPTCitisも存在した。depositsはCongo-red 陰性で、電顕にて内皮下やメサンギウム領域にfibronectin腎症に特徴的なorganized depositsを認めた(画像2)。さらにIST4陽性、IST9陰性より血清fibronectin沈着を確認し、fibronectin腎症の移植後再発と診断した。遺伝子解析により、FN1 exon28内の4412から4414番目の3塩基が欠失(c4412-4414del)で、従来 報告されていた変異ではなかった。本症例の子供5人についても遺伝子解析を行い、3人に同様の変異を認めた。 尿蛋白を認めた1人に腎生検を行い、内皮下およびメサンギウム領域のdepositsを認め(画像3)、特徴的な電顕像も確認し、fibronectin腎症と診断した。本邦では報告例のないfibronectin腎症の移植後再発例を報告する。


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