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【目的】近年、腎移植前の抗ドナー抗体検出法の精度が高くなり、術前に抗ドナー抗体が陽性と判明する症例が増えている。今回我々は、抗ドナー抗体陽性症例を組織学的に検討した。
【対象と方法】LCT法に加えFCXM検査、PRA検査を導入した2004年1月から2011年4月までの当院における生体腎移植症例199例のうち、移植前に抗ドナー抗体が陽性と判明した症例10例を対象にした。抗ドナー抗体陽性症例には血液型不適合移植に準じた前処置を行い、移植直前にPRAにて抗体の陰性化を確認して移植を行った。移植後はPRAを定期的にフォローし、移植後約1ヶ月と1年にプロトコル生検を行った。拒絶反応の組織学的評価は、Banff診断基準の急性拒絶反応のスコアリングと傍尿細管毛細血管炎スコア(PTC)を用いて評価した。
【結果・考察】症例の移植時年齢は47.5歳(30−63歳)女性9例、男性1例で、ドナーは夫婦が3例、両親が2例、子供が1例、ドナーの平均年齢は55.0歳(37歳−64歳)あった。全例に1次移植や妊娠、輸血等の感作歴があった。
血液型不適合移植は4例あった。3例で移植時脾臓摘出、7例でRituximabを用いた前処置を行った。平均生着期間は2年4ヶ月(1ヶ月−6年10ヶ月)であった。抗体関連急性拒絶反応をPRAの陽性化とともに2例に認め、PTCへの
C4d沈着があった。いずれもステロイドパルスあるいは血漿交換併用にて寛解した。慢性拒絶反応を1例に認め、移植後5年4か月で廃絶した。7例はプロトコル腎生検組織像にて拒絶反応や薬剤毒性を認めず、良好な腎機能で生着中である(現在の平均クレアチニン値は1.2mg/dl)。
【まとめ】感度の高い抗体検出方法で抗ドナー抗体を検索し、血液型不適合移植に準じた移植前処置や周術期管理を行うことで、早期成績は良好であった。しかし、今後も抗体関連拒絶反応を念頭に慎重に経過観察する必要がある。 |