移植腎におけるpenraxin 3の発現

新潟大学 腎・膠原病内科学分野
* 今井 直史、吉田 一浩、伊藤 由美、成田 一衛
神戸大学 腎臓内科
西 慎一
新潟臨港病院
大澤 豊
新潟大学 腎泌尿器病態学分野
中川 由紀、齋藤 和英、高橋 公太

【背景】Pentraxin 3(PTX3)は、IL-1やTNF-α の刺激によって炎症局所の細胞で産生・分泌される。CRPやSAPよりも局所の炎症を鋭敏に反映する急性期タンパクである。IgA腎症腎組織での発現亢進は報告されているが移植腎での報告はない。
【目的】PTX3の移植腎組織での発現と、拒絶反応による変化、臨床的意義について検討した。
【対象】平成19と20年に当院で生体腎移植術を行われ、移植時および移植後の生検が施行された16症例(血液型一致4例、不適合12例)62腎生検を対象とした。
【方法】移植腎生検標本を抗PTX3抗体で免疫染色し陽性部位を観察した。陽性部の割合を求め、臨床データやバンフスコアとの関連を検討した。拒絶反応の有無によるPTX3陽性率の変化について検討した。
【結果】PTX3は主に間質に発現していた。間質に占めるPTX3陽性率は、生検時の尿蛋白量、血清Cr値、血清CRP やSAA値とは正の、e-GFRとは負の相関を示した。急性病変を示すバンフスコアでは重症度が増すほどPTX3の割合が増加したが、慢性病変スコアとは関連がなかった。PTX3陽性率は、拒絶反応非発症時は低値であった。急性期に拒絶反応を発症した群では、発症時は有意に増加し、治療後は減少していた。慢性期に発症した群では、発症していない時にすでに、拒絶反応を発症しなかった群よりも有意に高値であった。
【結論】PTX3は移植腎組織では主に間質に発現しており、PTX3陽性率は拒絶反応に伴って増加し治療後は減少した。拒絶反応非発症時のPTX3陽性率によって、遠隔期の拒絶反応を予測できる可能性がある。

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