plasma cell-rich rejectionの一例

聖マリアンナ医科大学 腎泌尿器外科
* 北島 和樹、佐々木 秀郎、力石 辰也
聖マリアンナ医科大学 診断病理
小池 淳樹
聖マリアンナ医科大学 腎臓高血圧内科
清水 さやか、谷澤 雅彦、柴垣 有吾

 症例は56歳の男性。2007年10月より多発性嚢胞腎による慢性腎不全のため血液維持透析導入となっていた。 2009年2月に血液型適合生体腎移植術(ドナー:実母、78歳)を施行した。導入免疫抑制はタクロリムス(TAC)徐放製剤、ミコフェノール酸モフェチル、ステロイド、バシリキシマブで行い拒絶反応を生じることなく血清Cr:1.6 mg/dl前後で経過していた。
 2010年11月より高血圧と蛋白尿を認めたためラジレス®(アリスキレン:direct renin inhibitor, DRI)150mg/dayを開始した。その後、2011年1月にTAC血中濃度が低下(<2.0ng/ml)し、血清Crが2.36 mg/dlと上昇し移植腎生検を施行した。病理組織学的所見では多数の形質細胞を含む炎症細胞の高度の間質浸潤と中等度〜高度の尿細管炎を認めた。SV-40、C4dはともに陰性であった。以上よりAcute T-cell mediated rejection type IB, plasma cell-rich typeと診断し、ステロイドパルス療法を行った。しかしその後も血清Crが3.36 mg/dlまで上昇した為、1回のDFPPとグスペリムス7日間投与を施行した。血清Crは一旦2.40 mg/dlまで改善したが、数日で2.68 mg/dlまで再上昇した為、再度移植腎生検を行った。炎症細胞浸潤は改善しているもののAcute T-cell mediated rejection type IAの診断がなされ、ステロイドパルス療法を追加した。その後、血清Crは1.69 mg/dlまで改善し現在外来経過観察中である。
 Plasma cell-rich rejectionは予後不良と報告されており、文献的考察を加えて報告する。
 また自験例に起こった拒絶反応の要因としてTAC血中濃度低下が一つの要因とも考えられる。経過からはDRIが血中濃度低下に影響した可能性がある。現段階ではDRIはTACの薬物動態に影響しないと報告されているが、比較的新しい薬剤であるため、TACを内服している移植患者に処方する際にはTACの血中濃度に注意が必要であると考えられた。


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