抗DQB1 IgM抗体によると考えられる急性抗体関連型拒絶反応を発症した1例

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 山永 成美、武田 朝美、渡井 至彦、荻山 義明、村田 実奈子、
大塚 康洋、堀家 敬司、稲熊 大城、泉 久美子、岡田 学、
野畑 宏信、川口 武彦、山本 貴之、辻田 誠、平光 高久、
後藤 憲彦、南木 浩二、打田 和治、両角 國男
名古屋大学 免疫機能制御学寄附講座
小林 孝彰
増子記念病院
植木 常雄、片山 昭男
豊橋市民病院
長坂 隆治、大塚 聡樹
NPO法人 HLA研究所
佐治 博夫

 症例は61歳女性。慢性糸球体腎炎にてPre-emptiveに夫をドナーとしたABO血液型適合生体腎移植術を施行。術前CDC, FCXM, FlowPRA全て陰性であり、導入免疫抑制剤はGraceptor/MMF/PSL/Basilixmabで行なった。血流再開後もグラフトの張りは良好、WIT 2min1sec, TIT 84min, initial urine 21minであった。翌日のCrも1.96mg/dlまで低下していたが、4kgの体重増加にもかかわらず尿量は1700ml/day程度と良好とはいえなかった。Echo上血流は良好であったため経過を見ていたが、術後2日目朝から拡張期波形の消失、尿量減少がみられた。急性抗体関連型拒絶反応(AAMR)を疑い、即日開放腎生検を施行し、ステロイドパルス、IVIG、Rituximab、PEXを行った。病理組織診の結果はAAMR-type II(i0t0g3v2ptc2 C4d:focal positive weak)であった(図1,2,3)。2回透析を要したが、腎機能は回復し、退院時にはCr 1.22mg/dlまで低下した。保存血清をRetrospectiveに解析すると、DQB1に対するIgM抗体が術前中等量存在しており、移植後に抗体量が増大していたため、AAMRの原因と考えられた。その他 non-HLA抗体のMICA、抗血管内皮抗体は陰性であった。抗DQ抗体によるAAMRはまれで、IgM抗体によるものもまれであるため、通常の術前リスク評価では捉えることは困難である。移植腎生検組織を供覧する。


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