Body size mismatch によると思われるFSGSを発症した生体腎移植患者の1例

金沢大学附属病院 リウマチ・膠原病内科
* 原 怜史、角田 慎一郎、川野 充弘
藤田記念病院
宮崎 良一、宮城 恭子
山口病理組織研究所
山口 裕

 症例は43歳男性。9歳時に左第1趾に痛風発作が出現した。以後、高尿酸血症が持続し、20歳時に血液透析に導入された。原疾患は家族性若年性高尿酸血症性腎症などを想定したが家族歴はなく、導入前の腎生検もなく不明であった。41歳時に母を提供者として血液型不適合の生体腎移植を受けた(A型→O型)。体型はレシピエントが身長 165cm、体重 50.4kg、BMI 18.3kg/m2、BSA 1.54m2で、ドナーは身長 147.2cm、体重 34.8kg、BMI 16.1kg/m2、BSA 1.21m2でありドナーが小柄であった(ドナーの出生時体重 1800g)。退院時のCrは2.35mg/dLで蛋白尿は0.19g/dayであった。免疫抑制剤はシクロスポリン(CNI)、ミコフェノール酸モフェチルを使用した。しかし半年前に移植後新規発症糖尿病(NODAT)を合併し、蛋白尿が次第に増加し1-2g/dayとなり、以後も増加傾向であったため腎生検施行したところ、Focal glomerular sclerosis(FSGS)と診断された。アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を少量投与されたが数日後に著明な尿量減少、下腿浮腫が出現したため、Ca拮抗薬へ変更した。しかし蛋白尿は3.8-5.2g/dayとネフローゼレベルが継続した。43歳時(前回より1年3ヶ月後)に再生検しFSGS、CNI-related arteriolopathy with mucoid intimal thickingの所見であった。蛋白尿はスピロノラクトン12.5mgの投与により1.1-1.5g/日まで低下した。
 本例はBody size mismatchによると思われるFSGSを発症し、CNI障害による細動脈病変も高度で慢性Thrombotic microangiopathy(TMA)が前景に出ていると思われる所見を合併した症例であり、文献的考察を含めて報告する。


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