生体腎移植後の妊娠中に腎機能が増悪しその後維持透析に至った巣状糸球体硬化症の一例

(独)国立病院機構岡山医療センター 腎臓内科
* 太田 康介、片山 尚美、当真 貴志雄、寺見 直人、福岡 晃輔
(独)国立病院機構岡山医療センター 外科
藤原 拓造、田中 信一郎
(独)国立病院機構岡山医療センター 産婦人科
今福 紀章、多田 克彦
(独)国立病院機構岡山医療センター 臨床検査科
神農 陽子、山鳥 一郎

 症例は37歳女性。24歳のとき検診で腎障害を指摘(尿タンパク(++)、Cre 3mg/dl)、腎生検施行されるも 原疾患不明(線維性半月体を伴う硬化糸球体のみ)。32歳のとき短期間血液透析ののち他院で生体腎移植(母子、 ABO不適合)を受け生着した。免疫抑制剤は当初3剤(MMF, TAC, PSL)であったが、サイトメガロウイルス(CMV) 血症のためMMF中止。今回妊娠12週に当院産婦人科初診。来院時尿タンパク(+)、Cre 1.0mg/dl。徐々に血圧が 上昇し17週から産婦人科に管理入院。入院時浮腫はなく、尿タンパク(++)(2g/gCre)、尿潜血(−)、血清Cre 1.2mg/dl。降圧剤でしばらくは血圧安定していたが、29週頃より血圧上昇と浮腫増強し、腎機能は増悪した。31週6日にCre 1.9mg/dlとさらに悪化し血圧管理が不十分なため同日帝王切開にて出産した。産後Creが改善せず、腎生検にて巣状糸球体硬化症(FSGS)の所見を得た。副腎皮質ステロイド(CS)大量療法、LDLアフェレーシス施行 したが腎機能尿タンパクは改善せず。CMV血症を合併したためCMV治療とCSの減量を行い退院とした。その半年 後に維持血液透析再導入となった。本例は移植腎のFSGS(原病再発ないし新規発症)が妊娠出産にて増悪したと考えられ、治療は難渋した。組織上はTACや妊娠による影響の鑑別を要した。


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