移植腎に見られたC1q腎症の1症例

三井記念病院 病理診断科
* 藤井 晶子
東京女子医科大学 腎センター病理
堀田 茂
東京女子医科大学 第2病理
本田 一穂
聖マリアンナ医科大学 病理
小池 淳樹
東京慈恵会医科大学柏病院 病理
金綱 友木子
東京女子医科大学 泌尿器科
崔 啓子、田邉 起、清水 朋一、田邉 一成

 36歳男性。先天性のVUR(膀胱尿管逆流症)による腎症で29歳時に血液透析導入となった。30歳時に60歳の父 親をドナーとしてABO適合生体腎移植を行った。移植後血清クレアチニンは1.5mg/dl前後で腎機能は安定してい た。移植腎の0hour生検では酵素抗体法でメサンギウムにC1q陽性であったが、1年目のプロトコール生検までは C1qは減弱した。2年目のプロトコール生検では細動脈の硝子化と間質の縞状線維化が出現し、IFでメサンギウム にC1q沈着が再び増強していた。その後のプロトコール生検でもC1qは陽性であり、細動脈の硝子化と間質の縞状 線維化は進行していった。移植後4年頃より軽度の蛋白尿が出現した。36歳時(移植後6年)に血清クレアチニン 値が1.5から1.8mg/dlに上昇し、蛋白尿は0.26g/dayであった。生検では中等度から高度の間質線維化が見られ、 CNI毒性が関与した細動脈の硝子化が高度であった。残存する糸球体の変化は軽度でメサンギウム基質の軽度の増 加が見られた。IFでC1q陽性。電顕的には傍メサンギウム領域を主体に膜様構造物を伴う細顆粒状の高電子密度物 質の沈着が見られた。C1q腎症は1985年にJennetteらによって始めて提唱された疾患概念で、多くの症例は臨床 症状が軽度であるため腎生検の対象となる機会は少ない。当症例は0hourを含めて複数回のプロトコール生検で 継続してC1q沈着があり、一度減弱したもののその後徐々に進行していると考えられた。C1q腎症は稀な疾患であ り、移植腎にも報告は少ない。移植腎での進展を経時的に追えた示唆に富む症例であり、ここに提示する。


戻 る  ページの先頭