移植腎障害におけるcirculating fibrocyteおよび傍尿細管毛細血管周囲線維化の評価

金沢医科大学医学部 腎臓内科
* 木村 庄吾、渥美 浩克、井村 淳子、藤本 圭司、羽山 智之、
近澤 芳寛、中川 卓、奥山 宏、山谷 秀喜、浅香 充宏、横山 仁

【目的】移植腎障害におけるcirculating fibrocyteの意義と傍尿細管毛細血管周囲線維化について検討した。
【対象と方法】当院で腎移植術を施行しプロトコール生検を実施した、生体腎移植8例、献腎移植3例(無機能腎1例を含む)の計11例について、間質内circulating fibrocyte数(/mm2))、Masson Trichrome(MT)染色平均面積率 (%)、CD45染色陽性面積率(%)、Collagen type 1(COL1)染色陽性面積率(%)、α-smooth muscle actin(αSMA) 陽性面積率(%)の経時的推移(血管吻合前0hr、血流再開後1hr、移植後2-4週目、4-8週目、1年目以後)を検討した。 さらに、傍尿細管毛細血管(peritubular capillary, pc)周囲線維化の評価を、電子顕微鏡を用いてgrade0〜3に分類し、この電顕スコアとCOL1染色陽性面積率、αSMA陽性面積率、circulating fibrocyteとを比較した。
【結果】MT陽性面積率(%)は経時的に平均5.10より8.63へ上昇が認められた。COL1陽性面積率(%)は、平均0.77 より0.33と変化は認められなかった。circulating fibrocyte(/mm2)は、0hr平均0.21、1hr平均0.52より2-4週目にピーク(平均0.87)となり、その後4-8週目平均0.53、1年目以後平均0.26へと低下した。αSMA陽性面積率(%) は、0hr平均0.48、1hr平均0.41から1年目以後平均2.91へと増加した。CD45陽性面積率は、移植後1年目までは上昇を認めなかったが、その後に急激な上昇を示す症例を認めた。献腎移植後無機能腎の1例では、2週目に細胞成分を示すCD45陽性面積率、αSMA陽性面積率、circulating fibrocyte細胞数の増加を認めたが、6週目にはいずれも減少した。一方、MT陽性面積率、COL1陽性面積率は経時的に上昇した。 さらに、腎移植6カ月以後のpc線維化電顕スコアはCOL1陽性面積率(r=0.79、P<0.01)と正の相関を示した。α SMA陽性面積率とは正の相関傾向が認められた(r=0.39、P=0.24)。一方、circulating fibrocyteとは有意な負の相関を示した(r=−0.51、P<0.05)。
【結語】腎移植生着例では、虚血再還流障害によると考えられるcirculating fibrocyteが一過性に誘導されたが、線維化の進行は軽度であった。一方、慢性移植腎障害時のpc周囲線維化にはαSMA陽性細胞の関与が示唆された。


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