ABO不適合腎移植後の急性抗体関連型拒絶反応に続発した進行性のTMAにより早期に移植腎機能喪失した1症例

札幌北楡病院 腎臓移植外科
* 三浦 正義
札幌北楡病院 外科
土橋 誠一郎、玉置 透
市立旭川病院 泌尿器科
下田 直彦
KKR札幌医療センター 病理診断科
深澤 雄一郎、鈴木 昭
北海道大学病院 病理部
藤田 裕美、久保田 佳奈子
札幌北楡病院 腎臓内科
伊藤 洋輔

 症例は21歳の男性。浮腫を契機に末期腎不全を診断されて急遽血液透析導入となったが、腎生検によりIgA腎症予後不良群と診断された。扁桃腺摘除の後、49歳の母をドナーとしてA→OのABO不適合腎移植を施行した。術前フロークロスマッチ陰性、抗HLA抗体、抗MICA抗体陰性であった。術前抗A抗体価は1:256であった。タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メチルプレドニゾロン、リツキシマブ、血漿交換による減感作療法を行った。 Day2に移植腎機能低下、抗A抗体価上昇を認め、血漿交換、ステロイドパルスを開始、day5の移植腎生検では急性抗体関連型拒絶(AAMR)の所見を認めた。CD19陽性細胞の増加があり、リツキシマブを4回追加、また計14回 の血漿交換を行い、AAMRを離脱した。Day28には移植腎機能は不変も抗A抗体価の上昇と尿中FDPの増加があり 腎生検施行。この時はAAMRなしとされたが、後のreviewではTMAを指摘された。その後腎動脈吻合部狭窄によ る移植腎機能低下を来たし、day91に腎動脈再建術を施行したところday93に前立腺炎より敗血症に至り、AAMR が誘発された。腎生検でもフィブリノイド壊死を伴うAAMRを認め、ステロイドパルス、血漿交換を施行したが、乏尿となり血液透析をday119まで要した。血清Crは5程度までしか回復しなかった。腎生検ではTMAの増悪を認めた。Day159よりステロイドパルス、リツキシマブを投与したが、腎機能は更に増悪し、血液透析再導入となっ た。その際の腎生検では著明なTMAの所見を認めた。経過中一貫して抗A抗体以外の抗ドナー抗体を検出できなかった。本症例について、臨床病理学的に考察したい。

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