ATNが遷延したDSA陽性 / ABO不適合生体腎移植の1例

市立札幌病院 腎臓移植外科
* 堀田 記世彦、岩見 大基、平野 哲夫、原田 浩
市立札幌病院 泌尿器科
佐藤 択矢、村橋 範浩、高田 徳容、
望月 端吾、関 利盛、富樫 正樹
市立札幌病院 病理科
武内 利直

 症例は57歳女性。CGNによるESRDにて29年のHDを経て55歳夫をドナーに生体腎移植を施行した。ABからO型へのABO血液型不適合(抗A/B抗体価IgG 32/16x、IgM 32/32x)、HLAは3ミスマッチ、NIH-CDCXm陰性、 FlowTXm陽性、FlowPRA ScreeningI/II陽性、FlowPRA singleにてB39、62、DR12へのDSAあり(輸血歴を有す)。 2週間前よりのTAC/MMF/MPZの投与、術前の血漿交換(DFPP2、PEX2)、rituximab(50mg/mm2x2)、low dose IVIGにて、FlowXm陰性、FlowPRA screening陰性となり(B39のみ陰性化)(抗A/B IgG 4/4x、IgM 2/2x)腎移植を行った(3剤 basiliximab)。ドナー腎摘出、腎移植手術中の問題はなかったが、腎移植数時間後から徐々に尿量は減少し、Pulse Doppler USにて、拡張期血流の低下がみられ、POD1には乏尿、POD3には無尿となり以後 血液透析を必要とした。DSAは抗DR12が依然陽性。(抗血液型抗体価は低値)、臨床的にDSAよるAAMRと診断し、 PEを12回、rituximabを追加した。1週間後のBXでは、重症ATN、i0、t0、ptc1、C4d0であった。その後4回のBxでもいずれも同様の所見であったが、CNIの尿細管毒性が疑われTACをCSAに変更したが、移植腎機能は即座には回復しなかった。POD56頃より尿量は徐々に増加し、POD69に血液透析を離脱した。2ヶ月後のsCrは1.4mg/ dlで経過している。生体腎移植においてかような長期のATNはまれである。今回のATNは臨床的にAMRとの鑑別 が困難であり、病理学的に再検討する。


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