生体腎移植ベースライン生検における持ち込み病変の検討
〜提供前臨床パラメーターとの相関を含めて〜

京都府立医科大学 臓器応答探索医学講座
* 岡本 雅彦、吉村 了勇
京都府立医科大学大学院 移植・再生外科学
越野 勝博、昇 修治、牛込 秀隆、岡島 英明、吉村 了勇
京都府立医科大学大学院 計量診断病理学
浦崎 晃司

【背景・目的】我々は昨年の本研究会で生体腎ドナー適応評価のために術前腎生検を行い最終的な適応判断をした症例につき報告した。しかし侵襲的な生検を生体腎ドナーに強いることは可及的避けるべきであり、他の臨床パラメーターにより評価することが望ましい事は明白である。今回移植時の1時間生検にて見られたドナーからの持ち込み病変と提供前臨床パラメーターとの相関につき検討した。
【対象・結果】2003年から2008年までに当施設で行った生体腎移植症例で1時間生検を施行した89例中、サンプルが基準を満たした76例(85.4%)を対象とした。これらのドナーの平均年齢は54±10(25-72)歳、男性33例、女性43例、BMI23.1±3.2(17.3-35.2)、e-GFR79.1±14.2(50.4-121.8)ml/min/1.73m2、S-Cr:0.69±0.16(0.43−1.08)で、高血圧が6例(7%)、耐糖能異常(75g-OGTTの境界型以上)が22例(25%)にみられた。これらの1時間生検で糸球体硬化(GS:10%以上)、間質線維化(IF:5%以上)、動脈硬化(AS:中等度以上)、細動脈硝子化(AH:中等度以上)の見られたものはそれぞれ24%、18%、68%、28%であった。またそれぞれの病理所見と臨床パラメーターとの相関についてみると、GSでは年齢(p=0.005)、高血圧の有無(p=0.028)に、IFでは高血圧の有無(p=0.005)に、ASでは年齢(p=0.0002)、eGFR(p=0.001)、高血圧の有無(p=0.002)で有意差がみられ、AHでは有意差を認める項目は無かった。
【考察】生体腎提供可否に関しては非侵襲的検査にて判断することが好ましい。今回の検討では提供前臨床パラメーターよりある程度腎の組織学的変化を予測することが可能ではあった。しかし特にmarginalな症例では生体腎ドナーが片腎となることで、長期的にみて腎機能低下とならぬよう慎重に判断をすることが必要であると思われた。

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