超急性拒絶反応にて移植腎機能廃絶したABO血液型不適合夫婦間腎移植症例

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター
* 堀家 敬司、長坂 隆治、武田 朝美、大塚 康洋、鈴木 大成、
山内 友香子、辻田 誠、及川 理、平光 高久、後藤 憲彦、
渡井 至彦、打田 和治、両角 國男
名古屋大学医学部 免疫機能制御学教室
小林 孝彰

 症例は42歳女性。慢性腎盂腎炎を原疾患とする慢性腎不全で35歳時に血液透析導入となった。2007年に夫をドナーとするABO血液型不適合腎移植(A→O)を希望されて当院を受診した。術前処置として2007年11月に鏡視下脾臓摘出術が施行され、出血のためRCC2単位が輸血された。フローサイトメトリークロスマッチは陰性であり、当院で当時のプロトコルによりエンドキサンとプレドニゾロンを10日前から開始してDFPP4回行って脾臓摘出後3週間で移植手術を施行した。移植当日の抗A抗体価は、生食法x4/x64、クームス法x4/x8であった。
 移植手術はドナー左腎を右腸骨窩に定型的に移植したが、血流再開後1時間生検を行ってからしばらくして移植腎の色調と張りが不良となった。術中エコーでもgraft血流不良のため迅速生検を施行した(血流再開1.5時間)。糸球体係蹄・PTC腔内に好中球の集積あり、hyperacute rejectionと診断した(図1)。後に観察した1時間生検組織でも同様な所見であった(図2)。術直後よりPEXとIVIG25gを行ったが、翌日のDTPA腎血流シンチにてcoldであり第2病日に移植腎摘出となった(図3)。抗A抗体価の上昇なく、移植腎摘出後に抗ドナーHLA抗体が陽性となった。
 超急性拒絶反応を呈した1時間生検組織像、摘出腎組織像を供覧し、超急性拒絶反応の原因として抗A抗体、抗ドナーHLA抗体がどのように関与していたのかを臨床経過から吟味する。


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