生体腎移植4年後に腎機能低下を伴うネフローゼ症候群を呈した1例

東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
* 三留 淳、山本 裕康、丸山 之雄、小林 賛光、柳沼 樹宏、
松尾 七重、丹野 有道、早川 洋、宮崎 陽一、横山 啓太郎、
細谷 龍男
東京慈恵会医科大学柏病院 病院病理部
山口 裕

 31歳、男性。1997年に血尿・蛋白尿出現、2003年に腎生検で巣状糸球体硬化症(FGS)と診断された。2004年1月に末期腎不全となり血液透析に導入、同年11月に実父をドナーとする生体腎移植を実施した。術後経過は順調で、2ヶ月後、1年後、3年後のプロトコル生検では有意所見を認めなかった。2007年7月頃より蛋白尿の増加と腎機能低下を認め、2008年11月には尿蛋白は7g/日、血清クレアチニン値は2.0mg/dLを超え、腎障害とネフローゼ症候群の精査目的で2009年1月19日に入院となった。移植腎生検ではメサンギウム基質の増加と泡沫細胞浸潤を伴う結節性病変に加えて、カルシニューリン阻害薬(CNI)によるarteriolopathyを認めた。FGSの再発を考え血漿交換を実施したが効果なく、CNI毒性を考慮しタクロリムスの減量、ステロイド剤の増量、さらにLDL吸着療法を行ったところ、蛋白尿の減少、血清クレアチニン値の低下を認めた。腎移植後にネフローゼ症候群を発症することは稀ではないが、本症例のように術後4年目での発症の場合、FGSの再発とCNI毒性の鑑別は重要であり、若干の考察を加え報告する。


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