腎移植後1年で間質線維化の急速な進行がみられた3例

金沢医科大学 腎機能治療学
* 渥美 浩克、木村 庄吾、井村 淳子、近澤 芳寛、中川 卓、
奥山 宏、山谷 秀喜、浅香 充宏、横山 仁
金沢医科大学 病態診断医学
木下 英理子

 免疫抑制療法の進歩により腎臓移植の成績は向上しつつあるものの、免疫抑制が過剰であることに起因する術後のウイルス感染症が大きな問題となってきている。なかでもBKウイルス腎症は移植腎予後を左右する重篤な合併症であり、移植腎にみられる間質線維化の原因として重要である。今回、腎移植後1年目のprotocol biopsyで間質線維化の急速な進行が見られた症例を経験したので報告する。
 症例は28歳女性。54歳の母親をドナーとするABO適合生体腎移植術が施行された。移植後の免疫抑制剤はタクロリムス(FK)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、ステロイド、およびバシリキシマブで開始された。術後、血清クレアチニン(sCr)値は速やかに低下し尿量も増加傾向であった。術後4日目に下痢が出現。MMFによる副作用と考えMMFを減量するとともにFKのtroughも高値で持続したためFKの減量を行った。術後14日目にsCr値0.8mg/dlから1.0mg/dlへと上昇したため移植腎生検施行。FKによる腎毒性の所見を認めたため、FKの減量を行った。MMFを1000mg/dayまで減量しても下痢が改善しないためMMFをMZに変更。MZに変更後、下痢は速やかに改善し状態は安定し退院となった。退院時のsCr:0.85mg/dl、FK trough:13.8ng/ml。退院後はFK troughの目標値を5−10ng/mlとして、FKの投与量を調節した。sCr値は0.8−1.0mg/dlで推移。移植後、1年目のprotocolbiopsy目的で入院。尿中decoy細胞および血中BKウイルスDNAが陰性であり、抗SV40T抗体を用いた免疫染色でも陽性所見は得られなかった。BKウイルス腎症との確定診断は得られなかったが、免疫抑制薬を減量し現在経過観察中である。腎移植後の間質病変を考える上で興味深い症例と考え、報告する。


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