1型糖尿病患者における膵腎同時移植後の移植腎病理組織変化

東京女子医科大学 糖尿病センター
* 入村 泉、馬場園 哲也、岩本 安彦
東京女子医科大学 第2病理
入村 泉、本田 一穂、種田 積子、小田 秀明
東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター病理
堀田 茂
東京女子医科大学 腎臓外科
寺岡 慧
東京慈恵会医科大学附属柏病院 病理
山口 裕

 我が国では臓器提供が少なく、糖尿病腎不全に対する腎、膵移植ともに極めて少ないのが現状である。また、膵移植成績に関しては、心停止下で提供された膵臓の生着率は不良である。われわれは、心停止ドナーからの膵腎同時移植後、16年以上生着した1型糖尿病の1例を経験した。本症例における移植腎病理組織の変化を観察した結果を報告する。
 移植時年齢30歳女性。1968年(7歳)1型糖尿病を発症。1990年1月(28歳)糖尿病性腎不全により血液透析を導入された。1992年1月(30歳)当院で膵腎同時移植を施行、移植直後よりインスリン及び透析療法から離脱した。
導入期の免疫抑制剤は、シクロスポリン、メチルプレドニゾロン、アザチオプリンの3剤を併用した。移植後の膵・腎機能に関しては、HbA1C 4 〜 6%、食前血糖70 〜 110mg/dl、食後血糖110-150mg/dl、血清クレアチニン1.0〜 1.5mg/dlで推移していた。2002年(40歳)、膵腎同時移植後10年にプロトコール腎生検を施行したが、移植腎に糖尿病性変化を認めなかった。
 本例は、膵腎同時移植後長期にわたり膵・腎機能を保持し、移植腎病理変化を観察できた症例である。膵移植による血糖正常化が、移植腎における糖尿病性腎症の再発を予防しうることが示唆された。


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