移植腎にみられたLight chain deposition diseaseの一例

東京女子医科大学 第2病理
* 種田 積子、本田 一穂、小田 秀明
東京女子医科大学腎臓病総合医療センター 病理
堀田  茂
東京女子医科大学腎臓病総合医療センター 外科
小山 一郎、寺岡  慧
東京慈恵医科大学柏病院 病理
山口  裕

 61歳男性。1999年(53歳)に急性心筋梗塞に対して冠動脈バイパス手術を受けた際にCr1.3を指摘される。その後徐々に腎機能低下し、2001年11月にCAPD導入。現疾患は不明であった。2002年11月に姉(66歳)をドナーとする血液型適合生体腎移植を受けた。免疫抑制剤はシクロスポリン、プレドニゾロン、MMFを用い、Cr2.0にて経過していた。 2003年1月、Cr3.0になり、腎生検施行。拒絶の所見は見られず、糸球体もメサンギウム基質が所々で軽度増加しているものの、概ね保たれていた。2005年7月、Cr上昇に対しDSG350mgx5日間を施行後に腎生検施行。拒絶を伴わない慢性移植腎症の状態で、一部の糸球体でメサンギウム領域がやや拡大していた。その後腎機能が徐々に進行し、2007年4月にBUN90、Cr6台、尿蛋白1〜2+となり、HD再導入前の評価目的で腎生検施行。光顕では、糸球体係蹄のmicroaneurysmの形成や結節性病変が見られ、一部に線維性半月体の形成が認められた。細動脈壁の硝子化は高度で、拒絶の所見は見られなかった。IFではIgG、A、M、補体に有意な所見は無かったが、Light chainはκ3+、λ−であった。また電顕では、糸球体基底膜の内皮側に帯状の沈着物がみられ、メサンギウム基質内にも同様な沈着物が観察された。以上よりLight chain deposition diseaseと診断した。本例は移植後4年の経過でLCDDによる腎障害が進行し、透析導入に至った稀な症例と考え、臨床的経過とあわせて報告する。


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